◎2017年3月31日(金)
登山口駐車場(7:54)……「動物たちへの合図の鐘」(8:47)……撤退(9:53)……鐘(10:24)……大峯山取り付き(10:51)……大峯山△1136.3m(11:18~11:37)……林道合流(12:24)……駐車場(12:42)
長岡出張が入ったので、ついでに米山に行くつもりで準備していたが、どうにも時間が取れなくなった。しかたなく今週も近場でごまかすかと、ここのところの降雪で雪山に逆戻りしたらしい赤城山に行くことにした。だが、人気の黒檜山、駒ヶ岳周回では面白味に欠ける。そんな時、高木から船ヶ鼻(1466m標高点。「船ヶ鼻山」)に昭和村側から登るとツツジがきれいだという話を聞き、ツツジの季節には早過ぎるが、前倒しで船ヶ鼻に行くことにした。
情報を集めると、昨年の8月に村で登山道を開通させたらしい。とはいっても、これまでにも歩いている人はいたらしく、40年前には登山道もあったようだし、東電の巡視路もある。つまりは村で登山道として整備したということだろう。定番で大沼の方から行くのもいいが、これまで昭和村とは縁がなかったので、この登山道を歩いてみるつもりでいる。
今回の歩きに際し、早速これを10月に歩かれたあにねこさんの記事を参考にさせていただいた。あにねこさんは野坂峠までつなげていらしたが、雪もあることだろうし、通常の周回コースにしておくのが無難だろう。
(第一ゲート)
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(ゲートから船ヶ鼻)
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今日は朝からどんよりしていて、赤城山も薄ぼんやりで、いったいどの程度の白さなのか皆目見当がつかないままに昭和村に入った。ナビの指示に従い高速利用でやって来たが、登山口が近づいてから通行止め、迂回やらでナビが騒ぎ出し、勘を頼りに雪道を通って、第一ゲートの前になんとか到着した。
「鹿柵ゲート」となっている。ここは自分で開けて中に入るようだ。正面には巨大な鉄塔を乗せた船ヶ鼻が横たわっている。なんだか予想以上に白っぽい。ゲートを抜けて400mほどの舗装道を行くと、右手に広い駐車場があった。村がこの登山道にかける意気込みを感じるし、駐車場の上には重機が置かれている。後で知ったが、ゲート脇に「昭和村ビューポイント(四阿)整備工事」の看板が立っていた。確かに、ここからは谷川岳連峰も正面に見えていてビューポイントだ。ぼんやりした景色なのが残念。これからの時期に合わせ、公園化の工事も進むだろうが、今日はひっそりとしていて人の気配もない。
(コース案内図の看板。アップ版は⇒こちら)
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(楢水コースの方に)
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林道歩きが長いようで、ましてこの時期だし泥濘続きが予想される。足は長靴にした。スパイクなしの長靴。背中にワカン。設置された真新しいコース案内図を確認。この時点では、今日のコースはそう長くもないし、ついでに、歩きのルートもないような大峯山に立ち寄るつもりでいるから、上りは楢水コース、下りは牛石コースにする。だが、これは後で考えると誤算だったらしく、牛石コースは林道、作業道が基調のコースのようで、あるいは山頂に達することもできたかもしれない。今さらのことだが。
(第二ゲート)
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(林道。ここはまだ雪も締まっていた)
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林道を行くとすぐに第二ゲート。ここもまた開けて閉める。入ると、右手に作業小屋のようなプレハブがあり、そちらからも林道が合流する(帰路で使用)。さっきまでのほんの少しの区間、地肌が出ていた林道はこの先ずっと雪で覆われ、轍すらない。最初のうちは長靴で正解だったなと思っていたが、次第に沈み込むようになると、歩きづらくなる。表面は硬いが、一歩入れるとズブッとなる。ここでワカンを早速履いた。ついでにダブルストック。多少は歩きやすくなった。
(鈴ヶ岳。左が船ヶ鼻)
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(振り返って、こんもりと三峰山)
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(こちらは大峯山)
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しばらくは快適だったが、ワカンとて万能ではなく水気のある雪では沈む。歩程はかなり遅い。植林から開けたところに出ると、林道先に三角形の鈴ヶ岳が見えてきた。この山、最後までずっと見えていた。船ヶ鼻という赤城連山の端くれを歩いていながら、見えるのは鈴ヶ岳だけとはちょっと寂しいが、山頂からでもそうだったのだろうか(ハイトスさんはじめの記事を拝見すると、船ヶ鼻は展望に恵まれない山らしいが)。振り返って後方にテーブル状の山がぼんやり見えている。あれは三峰山だろう。そして、前方右手至近にあるのが大峯山ということになる。簡単に行けそうだが、雪が多そうだ。
(温かみのある手書き標識が続く)
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(林道の雪が深くなってくる)
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再び植林の中の林道歩きに戻る。雪が深くなり、絶えず沈むようになった。それでも20cmほどの沈みか。「山頂→」の手書き標識が出てくる。この先もまた、この標識にはお世話になる。
(動物たちへの合図の鐘)
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黙々と林道を歩いて行くと、鐘が置かれている。「動物たちへの合図の鐘」とあり、「安全登山」と記されている。標識によると、ここから林道を離れることになっているが、ここまで1.7km。1時間近く費やしている。大峯山に立ち寄ったりしている場合ではないようだ。まして、そのうちに雪が落ちてきてもおかしくない空模様。大峯山はあきらめるとしよう。だれもいないので鐘を5回叩いた。結構鳴り響く鐘だ。ちなみにこの鐘、案内図には「幸福の鐘」とある。あにねこさん曰くの両者ともにハッピーということだろう。
(右が沢になっていて、しばらくはこれに沿って行く)
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(別の沢を渡る)
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標識に合わせて船ヶ鼻に向かう。登山道らしき薄っすらとした窪みは続いているが、だれもずっと歩いていないのか不明瞭。これでは迷うかもなと心配になったが、ピンクのテープやら「山頂→」の標識が続くので助かる。これが吹雪いたりでもしたら果たして確認できるだろうか。右が沢状になっているようで、しばらくはこれに沿って登る。
(作業道のようなものが出てくる。ロープが張ってあるが、ここは直進)
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やがて、登山道標識は突き当たって左に折れる。ピンクテープもまた左に続いている。ここで沢をまたぐ形になるが、雪の薄いところを越えればさして問題はない。渡って登ると、左から作業道らしき窪みを合わす。だがこれも一瞬で、その先がどうなっているのかはまったくわからない。
後で考えると、この時期なら、ここを左の枝尾根に上がった方がよかったみたいだ。その尾根に登ろうとして退却もしたわけだし。
(ここからが本番になる)
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(標識には「ガンバろう」とある。がんばれなかった)
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(こう見えても、雪はかなり深い)
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(楽な方に移動を試みたがすごすごと戻る)
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植林から抜け出し、雑木の斜面になった。地図では等高線が一時的に密になっているところだ。見た目はたいしたこともないようだが、植林帯ではないだけに雪が一段と深くなった。左上に明瞭な尾根型が見え、テープを無視してそちらに移ろうとしたが、ヒザ超えの雪で先に進まない。夏道に戻って登るしかないようだ。
登山道側の雪はさらにズボズボになっていた。太股まで入り込み、部分的に腰まで浸かる。支えのストックは突き抜けて役に立たない。ということは、ワカンはそれなりに効果もあるのだろうが、2mの標高を稼ぐのに1分近い労力を費やすようになってしまった。後ろ足がすんなりと前に出ない。雪から出すのに、雪も重いためになかなか足が抜けてくれない。力づくで前に進むと、身体が前かがみに雪に埋まってしまう。この繰り返しになってしまった。いらついたのは、すっぽ抜けのストックがワカンの前部に入り込み、つんのめること。
(ここであっけなく退却)
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雪がなかったとしても急に思える斜面だ。地図を見れば、これは一時的な斜面で、後は50mも登れば緩斜面が待っているはずではあるのだが、これでは緩斜面に出ても状況は変わるまい。まして、コースを無視して枝尾根に向かい直したところで同じだろう。目の先、たかが50mの登りなのに、このまま一人ラッセルではきついし、限界も見えている。船ヶ鼻までのコースタイムは2時間ちょい。もう2時間経過しようとしているのに、まだここでジタバタしている。
何も、この時期に楽勝コースを四苦八苦して登ることもないだろう。登山道設置のキャッチフレーズは「子どもから高齢者まで楽しめる」だった。その高齢者が先に進めずにもがき苦しんでいる。むしろ、ツツジの時期にでものんびりダラダラと登った方が楽しいんじゃないのか。そんな気持ちがもたげた。
地図を見て、牛石コースまでトラバースして再挑戦という手も考えたりしたが、この雪の状態では腰ラッセル続きもあり得る。あっさりと撤退。
(自分のトレースを頼りに下る)
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(鐘撞き場に戻る。林道を左に行く)
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そうと決まればいさぎよい。行動も早い。さっさと下山にかかる。だが、そう簡単には下れない。自分のトレースを下ろうとしてもあっさりと踏み抜いてしまうし、足がとられてつんのめりもする。平らなところに出てほっとして一服。
この時期の船ヶ鼻は縁がなかったなぁ。ツツジ見物の下見と称して高木を連れて来て、ヤツにラッセル先導させた方が賢明だったよと、作戦失敗を後悔する。しかし、赤城の北側はいつもこんなに残雪が多いのだろうか。平年よりも雪が少ないとはいっても、この時期までだらだらと降雪があれば、結局は平年並みということではないのか。
鐘撞き場に戻った。下りに30分。登りに1時間以上かけた。まだ10時半にもなっていない。せめてあと一時間くらいは往路の途上でいたい。鐘を3回叩いて大峯山に向かう。大峯山とて同じように雪深で、今日はスノーハイクで終わるかもしれないが、高速使って昭和村まで来て、このまま帰るのではいくら何でもなぁということになる。
(向こうからこちらに来た。ここもまたロープの意味が不明)
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(左の植林を通ってショートカット)
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(こちらもまた深い)
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林道を先に行くと、沢で途切れていた。その先は続いている。ここを突っ切るのはきつい。ちょっと下って、段差の少ないところから渡る。大峯山の下を通る林道は別林道で、ここは植林を通ってショートカット。こちらもまた雪が豊富な林道に出た。
この大峯山だが、登る人も稀だが、この林道に車を乗り入れ、真下に車を置いて、往復10分もかからずに登った記録を見たりもしている。林道に車も入らず、巨大なかまくらでも作れそうなこの時期には無理な話で、地道に歩いて登るしかない。
(この辺から)
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(意外に急だった)
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登りやすそうな斜面に取り付く。こちらは雪解けの状態だが、その分雪が緩く、湿り気もたっぷりだ。ズルズルになって登りづらい。自然に、樹に抱きつきながらの登りになった。途中で休んで見下ろすと、意外に傾斜がある。
(傾斜が落ち着いて)
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(登りきってから山頂まで結構あった)
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(大峯山山頂)
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小尾根に乗ると楽になった。樹間から船ヶ鼻と鈴ヶ岳が大きく見える。すぐに北からの尾根に合流する。この先は平らだ。GPSを見ると、三角点はまだ先。苦痛を感じない山ではあるが、雑木がうるさいところだ。
すかいさん氏の山名板があったので、ここが山頂だろうが、三角点標は雪の中に埋没し、どこにあるのかわからない。腰かける場もなく、湿った切り株にシートを敷いて腰かけて休憩する。大峯山だけでも登ったから、今日のところは良しとしようじゃないか。限界越えの危険を冒して登るまでもない。
(下りはワカン+アイゼンで。カラフルになった)
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特別な理由も意図もなくワカンにアイゼンをセットしてみた。アイゼンとはいっても6本爪の軽アイゼンだ。ワカンのバンドの間隔もうまく合って、セッティングに支障はない。アイゼン巻きを先行し、その後にワカン付ける。シャキッとした気分だが、ここまでの間に長靴の中はかなり湿っていて、足も冷たくなっている。靴下も履き替えたいところだ。長靴から足を出すと湯気が出ている。
そのまま反対側に林道に出てもいいが、少しはルート外しをしてみたい。途中で合流した北からの尾根を下ることにしよう。末端付近でうまく林道に合流してもいるし。
(船ヶ鼻)
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(そして鈴ヶ岳。いずれもすっきりしない展望)
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(尾根を北に下る。ハイカーとしては初歩きだったりして)
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(いい感じ)
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(左に植林のアクセント)
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地図通りにゆるやかな尾根だ。踏み抜きもたまにある。紛らわしい尾根もあるが、基本は直進→左→右だ。自然林の中の歩きで、左、右に植林がかすめたりもする。12時のチャイムがどこからともなく聞こえてくる。そろそろ正式な食事をしたいところだが、雪で手頃な休み場もない。
(窪みに出る。突きあたりにバリケードのようなものが見えた)
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(ここに除草剤が埋没しているとあった。猛毒か?)
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尾根通しに下って行くと、窪みが出てきた。これは作業道だろう。左からも作業道の窪みが合流して右の植林に下っている。その先は林道のはずだ。それに合わせてもいいが、まだ直進するのに不都合はない。まして、窪みが延びてもいる。
(足型に合わせて下って)
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(林道に出る)
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(そしてこれに合流)
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そろそろ林道に下ろうか。末端まで行くと林道を戻ることになる。大きな足型があった。いつのものかは見当がつかないが、古いものが広がったのだろう。それに合わせて下ると林道に出た。この林道をちょっと行くと、向かい側から轍のある林道が合流して右にカーブする。ここに土管が放置されていたので、これに座って休憩。この林道だけは、この時期でも車が通っているようだ。ワカンとアイゼンを外す。
(プレハブ小屋。左にゲート)
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林道を先に行くと、出がけに見たプレハブの小屋。車が2台置かれている。小屋の煙突からは煙が出ている。車には「利根沼田森林管理署」と記されている。小屋の前を通ると、出発時の林道に合流して第二ゲートの前に出た。
駐車場には相変わらず自分の車だけ。こんな時期に歩くハイカーがいるわけもない。備え付けの水道で長靴を洗う。長いホースもあったので、ついでに洗車もしようかと思ったが、さすがにそれは気が引けた。
(駐車場の上から上州武尊)
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(子持山)
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(谷川連峰。手前に三峰山)
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石に腰かけてランチ。ポットの湯でスープを飲んでおにぎりを食べる。天気の良いのどかな日和だったら谷川岳を眺めてゆっくりもしようが、寒い。暖まった身体もすぐに冷え込む。早々に切り上げる。
帰路は渋川まで出て17号で帰ることにする。最近、バイパスが熊谷・渋川間で全通になったようだ。かなりの時間短縮らしいが、50号合流までの区間は一車線になっていて、大型の通行も多く、たいした短縮のお得感はなかった。
(本日の軌跡)
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「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
登山口駐車場(7:54)……「動物たちへの合図の鐘」(8:47)……撤退(9:53)……鐘(10:24)……大峯山取り付き(10:51)……大峯山△1136.3m(11:18~11:37)……林道合流(12:24)……駐車場(12:42)
長岡出張が入ったので、ついでに米山に行くつもりで準備していたが、どうにも時間が取れなくなった。しかたなく今週も近場でごまかすかと、ここのところの降雪で雪山に逆戻りしたらしい赤城山に行くことにした。だが、人気の黒檜山、駒ヶ岳周回では面白味に欠ける。そんな時、高木から船ヶ鼻(1466m標高点。「船ヶ鼻山」)に昭和村側から登るとツツジがきれいだという話を聞き、ツツジの季節には早過ぎるが、前倒しで船ヶ鼻に行くことにした。
情報を集めると、昨年の8月に村で登山道を開通させたらしい。とはいっても、これまでにも歩いている人はいたらしく、40年前には登山道もあったようだし、東電の巡視路もある。つまりは村で登山道として整備したということだろう。定番で大沼の方から行くのもいいが、これまで昭和村とは縁がなかったので、この登山道を歩いてみるつもりでいる。
今回の歩きに際し、早速これを10月に歩かれたあにねこさんの記事を参考にさせていただいた。あにねこさんは野坂峠までつなげていらしたが、雪もあることだろうし、通常の周回コースにしておくのが無難だろう。
(第一ゲート)

(ゲートから船ヶ鼻)

今日は朝からどんよりしていて、赤城山も薄ぼんやりで、いったいどの程度の白さなのか皆目見当がつかないままに昭和村に入った。ナビの指示に従い高速利用でやって来たが、登山口が近づいてから通行止め、迂回やらでナビが騒ぎ出し、勘を頼りに雪道を通って、第一ゲートの前になんとか到着した。
「鹿柵ゲート」となっている。ここは自分で開けて中に入るようだ。正面には巨大な鉄塔を乗せた船ヶ鼻が横たわっている。なんだか予想以上に白っぽい。ゲートを抜けて400mほどの舗装道を行くと、右手に広い駐車場があった。村がこの登山道にかける意気込みを感じるし、駐車場の上には重機が置かれている。後で知ったが、ゲート脇に「昭和村ビューポイント(四阿)整備工事」の看板が立っていた。確かに、ここからは谷川岳連峰も正面に見えていてビューポイントだ。ぼんやりした景色なのが残念。これからの時期に合わせ、公園化の工事も進むだろうが、今日はひっそりとしていて人の気配もない。
(コース案内図の看板。アップ版は⇒こちら)

(楢水コースの方に)

林道歩きが長いようで、ましてこの時期だし泥濘続きが予想される。足は長靴にした。スパイクなしの長靴。背中にワカン。設置された真新しいコース案内図を確認。この時点では、今日のコースはそう長くもないし、ついでに、歩きのルートもないような大峯山に立ち寄るつもりでいるから、上りは楢水コース、下りは牛石コースにする。だが、これは後で考えると誤算だったらしく、牛石コースは林道、作業道が基調のコースのようで、あるいは山頂に達することもできたかもしれない。今さらのことだが。
(第二ゲート)

(林道。ここはまだ雪も締まっていた)

林道を行くとすぐに第二ゲート。ここもまた開けて閉める。入ると、右手に作業小屋のようなプレハブがあり、そちらからも林道が合流する(帰路で使用)。さっきまでのほんの少しの区間、地肌が出ていた林道はこの先ずっと雪で覆われ、轍すらない。最初のうちは長靴で正解だったなと思っていたが、次第に沈み込むようになると、歩きづらくなる。表面は硬いが、一歩入れるとズブッとなる。ここでワカンを早速履いた。ついでにダブルストック。多少は歩きやすくなった。
(鈴ヶ岳。左が船ヶ鼻)

(振り返って、こんもりと三峰山)

(こちらは大峯山)

しばらくは快適だったが、ワカンとて万能ではなく水気のある雪では沈む。歩程はかなり遅い。植林から開けたところに出ると、林道先に三角形の鈴ヶ岳が見えてきた。この山、最後までずっと見えていた。船ヶ鼻という赤城連山の端くれを歩いていながら、見えるのは鈴ヶ岳だけとはちょっと寂しいが、山頂からでもそうだったのだろうか(ハイトスさんはじめの記事を拝見すると、船ヶ鼻は展望に恵まれない山らしいが)。振り返って後方にテーブル状の山がぼんやり見えている。あれは三峰山だろう。そして、前方右手至近にあるのが大峯山ということになる。簡単に行けそうだが、雪が多そうだ。
(温かみのある手書き標識が続く)

(林道の雪が深くなってくる)

再び植林の中の林道歩きに戻る。雪が深くなり、絶えず沈むようになった。それでも20cmほどの沈みか。「山頂→」の手書き標識が出てくる。この先もまた、この標識にはお世話になる。
(動物たちへの合図の鐘)

黙々と林道を歩いて行くと、鐘が置かれている。「動物たちへの合図の鐘」とあり、「安全登山」と記されている。標識によると、ここから林道を離れることになっているが、ここまで1.7km。1時間近く費やしている。大峯山に立ち寄ったりしている場合ではないようだ。まして、そのうちに雪が落ちてきてもおかしくない空模様。大峯山はあきらめるとしよう。だれもいないので鐘を5回叩いた。結構鳴り響く鐘だ。ちなみにこの鐘、案内図には「幸福の鐘」とある。あにねこさん曰くの両者ともにハッピーということだろう。
(右が沢になっていて、しばらくはこれに沿って行く)

(別の沢を渡る)

標識に合わせて船ヶ鼻に向かう。登山道らしき薄っすらとした窪みは続いているが、だれもずっと歩いていないのか不明瞭。これでは迷うかもなと心配になったが、ピンクのテープやら「山頂→」の標識が続くので助かる。これが吹雪いたりでもしたら果たして確認できるだろうか。右が沢状になっているようで、しばらくはこれに沿って登る。
(作業道のようなものが出てくる。ロープが張ってあるが、ここは直進)

やがて、登山道標識は突き当たって左に折れる。ピンクテープもまた左に続いている。ここで沢をまたぐ形になるが、雪の薄いところを越えればさして問題はない。渡って登ると、左から作業道らしき窪みを合わす。だがこれも一瞬で、その先がどうなっているのかはまったくわからない。
後で考えると、この時期なら、ここを左の枝尾根に上がった方がよかったみたいだ。その尾根に登ろうとして退却もしたわけだし。
(ここからが本番になる)

(標識には「ガンバろう」とある。がんばれなかった)

(こう見えても、雪はかなり深い)

(楽な方に移動を試みたがすごすごと戻る)

植林から抜け出し、雑木の斜面になった。地図では等高線が一時的に密になっているところだ。見た目はたいしたこともないようだが、植林帯ではないだけに雪が一段と深くなった。左上に明瞭な尾根型が見え、テープを無視してそちらに移ろうとしたが、ヒザ超えの雪で先に進まない。夏道に戻って登るしかないようだ。
登山道側の雪はさらにズボズボになっていた。太股まで入り込み、部分的に腰まで浸かる。支えのストックは突き抜けて役に立たない。ということは、ワカンはそれなりに効果もあるのだろうが、2mの標高を稼ぐのに1分近い労力を費やすようになってしまった。後ろ足がすんなりと前に出ない。雪から出すのに、雪も重いためになかなか足が抜けてくれない。力づくで前に進むと、身体が前かがみに雪に埋まってしまう。この繰り返しになってしまった。いらついたのは、すっぽ抜けのストックがワカンの前部に入り込み、つんのめること。
(ここであっけなく退却)

雪がなかったとしても急に思える斜面だ。地図を見れば、これは一時的な斜面で、後は50mも登れば緩斜面が待っているはずではあるのだが、これでは緩斜面に出ても状況は変わるまい。まして、コースを無視して枝尾根に向かい直したところで同じだろう。目の先、たかが50mの登りなのに、このまま一人ラッセルではきついし、限界も見えている。船ヶ鼻までのコースタイムは2時間ちょい。もう2時間経過しようとしているのに、まだここでジタバタしている。
何も、この時期に楽勝コースを四苦八苦して登ることもないだろう。登山道設置のキャッチフレーズは「子どもから高齢者まで楽しめる」だった。その高齢者が先に進めずにもがき苦しんでいる。むしろ、ツツジの時期にでものんびりダラダラと登った方が楽しいんじゃないのか。そんな気持ちがもたげた。
地図を見て、牛石コースまでトラバースして再挑戦という手も考えたりしたが、この雪の状態では腰ラッセル続きもあり得る。あっさりと撤退。
(自分のトレースを頼りに下る)

(鐘撞き場に戻る。林道を左に行く)

そうと決まればいさぎよい。行動も早い。さっさと下山にかかる。だが、そう簡単には下れない。自分のトレースを下ろうとしてもあっさりと踏み抜いてしまうし、足がとられてつんのめりもする。平らなところに出てほっとして一服。
この時期の船ヶ鼻は縁がなかったなぁ。ツツジ見物の下見と称して高木を連れて来て、ヤツにラッセル先導させた方が賢明だったよと、作戦失敗を後悔する。しかし、赤城の北側はいつもこんなに残雪が多いのだろうか。平年よりも雪が少ないとはいっても、この時期までだらだらと降雪があれば、結局は平年並みということではないのか。
鐘撞き場に戻った。下りに30分。登りに1時間以上かけた。まだ10時半にもなっていない。せめてあと一時間くらいは往路の途上でいたい。鐘を3回叩いて大峯山に向かう。大峯山とて同じように雪深で、今日はスノーハイクで終わるかもしれないが、高速使って昭和村まで来て、このまま帰るのではいくら何でもなぁということになる。
(向こうからこちらに来た。ここもまたロープの意味が不明)

(左の植林を通ってショートカット)

(こちらもまた深い)

林道を先に行くと、沢で途切れていた。その先は続いている。ここを突っ切るのはきつい。ちょっと下って、段差の少ないところから渡る。大峯山の下を通る林道は別林道で、ここは植林を通ってショートカット。こちらもまた雪が豊富な林道に出た。
この大峯山だが、登る人も稀だが、この林道に車を乗り入れ、真下に車を置いて、往復10分もかからずに登った記録を見たりもしている。林道に車も入らず、巨大なかまくらでも作れそうなこの時期には無理な話で、地道に歩いて登るしかない。
(この辺から)

(意外に急だった)

登りやすそうな斜面に取り付く。こちらは雪解けの状態だが、その分雪が緩く、湿り気もたっぷりだ。ズルズルになって登りづらい。自然に、樹に抱きつきながらの登りになった。途中で休んで見下ろすと、意外に傾斜がある。
(傾斜が落ち着いて)

(登りきってから山頂まで結構あった)

(大峯山山頂)

小尾根に乗ると楽になった。樹間から船ヶ鼻と鈴ヶ岳が大きく見える。すぐに北からの尾根に合流する。この先は平らだ。GPSを見ると、三角点はまだ先。苦痛を感じない山ではあるが、雑木がうるさいところだ。
すかいさん氏の山名板があったので、ここが山頂だろうが、三角点標は雪の中に埋没し、どこにあるのかわからない。腰かける場もなく、湿った切り株にシートを敷いて腰かけて休憩する。大峯山だけでも登ったから、今日のところは良しとしようじゃないか。限界越えの危険を冒して登るまでもない。
(下りはワカン+アイゼンで。カラフルになった)

特別な理由も意図もなくワカンにアイゼンをセットしてみた。アイゼンとはいっても6本爪の軽アイゼンだ。ワカンのバンドの間隔もうまく合って、セッティングに支障はない。アイゼン巻きを先行し、その後にワカン付ける。シャキッとした気分だが、ここまでの間に長靴の中はかなり湿っていて、足も冷たくなっている。靴下も履き替えたいところだ。長靴から足を出すと湯気が出ている。
そのまま反対側に林道に出てもいいが、少しはルート外しをしてみたい。途中で合流した北からの尾根を下ることにしよう。末端付近でうまく林道に合流してもいるし。
(船ヶ鼻)

(そして鈴ヶ岳。いずれもすっきりしない展望)

(尾根を北に下る。ハイカーとしては初歩きだったりして)

(いい感じ)

(左に植林のアクセント)

地図通りにゆるやかな尾根だ。踏み抜きもたまにある。紛らわしい尾根もあるが、基本は直進→左→右だ。自然林の中の歩きで、左、右に植林がかすめたりもする。12時のチャイムがどこからともなく聞こえてくる。そろそろ正式な食事をしたいところだが、雪で手頃な休み場もない。
(窪みに出る。突きあたりにバリケードのようなものが見えた)

(ここに除草剤が埋没しているとあった。猛毒か?)

尾根通しに下って行くと、窪みが出てきた。これは作業道だろう。左からも作業道の窪みが合流して右の植林に下っている。その先は林道のはずだ。それに合わせてもいいが、まだ直進するのに不都合はない。まして、窪みが延びてもいる。
(足型に合わせて下って)

(林道に出る)

(そしてこれに合流)

そろそろ林道に下ろうか。末端まで行くと林道を戻ることになる。大きな足型があった。いつのものかは見当がつかないが、古いものが広がったのだろう。それに合わせて下ると林道に出た。この林道をちょっと行くと、向かい側から轍のある林道が合流して右にカーブする。ここに土管が放置されていたので、これに座って休憩。この林道だけは、この時期でも車が通っているようだ。ワカンとアイゼンを外す。
(プレハブ小屋。左にゲート)

林道を先に行くと、出がけに見たプレハブの小屋。車が2台置かれている。小屋の煙突からは煙が出ている。車には「利根沼田森林管理署」と記されている。小屋の前を通ると、出発時の林道に合流して第二ゲートの前に出た。
駐車場には相変わらず自分の車だけ。こんな時期に歩くハイカーがいるわけもない。備え付けの水道で長靴を洗う。長いホースもあったので、ついでに洗車もしようかと思ったが、さすがにそれは気が引けた。
(駐車場の上から上州武尊)

(子持山)

(谷川連峰。手前に三峰山)

石に腰かけてランチ。ポットの湯でスープを飲んでおにぎりを食べる。天気の良いのどかな日和だったら谷川岳を眺めてゆっくりもしようが、寒い。暖まった身体もすぐに冷え込む。早々に切り上げる。
帰路は渋川まで出て17号で帰ることにする。最近、バイパスが熊谷・渋川間で全通になったようだ。かなりの時間短縮らしいが、50号合流までの区間は一車線になっていて、大型の通行も多く、たいした短縮のお得感はなかった。
(本日の軌跡)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」