◎2018年3月25日(日)
道志水源の森駐車場(6:56)……標識発見(7:08)……鉄塔(7:29)……林道横切り(7:34)……チェーンスパイクを履く・標高1010mあたり(8:19)……ワラビタタキ(9:21~9:34)……ウバガ岩(9:45)……標高1232m付近(10:10~10:17)……秋山峠(11:00)……赤鞍ヶ岳(11:08~11:11)……秋山峠(11:17~11:29)……979m標高点付近・入道山(12:00)……林道(12:22~12:35)……村役場・国道(12:51)……駐車場(13:02)
大月の山よりももうちょい近くで、そして三ツ峠山に邪魔されない富士山を見たいと、道志方面の山に行くつもりでいたが、出発間際までそれなりに悩んでいた。先ずは行く日。土曜日予定でいたが、晴れてはいても雲が多めの土曜日よりも日曜日の方が快晴に近い。翌日の月曜日に疲れが残るかもと土曜日にしたのだが、行ったはいいが富士山を拝めないのでは意味がない。日曜の用事を土曜日に前倒しして日曜日に変更。肝心なのは歩くコースだ。これは道志からは外れて都留方面になるが、道坂トンネルから今倉山経由で二十六夜山往復。もう一案はマイナーっぽい感じがしたが、ワラビタタキから赤鞍ヶ岳を経由して菜畑山に至るコース。出発直前で後者にした。理由は自宅からのアクセス。道坂トンネルでは中央道で都留まで行かなきゃならない。後者コース選択なら一般道は長いが圏央道のまま相模原ICで済む。帰りの渋滞のことも考慮した。
この時点では、道志の山は大月よりも南だし、まさか雪があるとは思いもせずに出向いた。まして今週は日を追うごとに暖かくなりそうだし、敢えて雪山装備の類といえば、用心用のチェーンスパイクを持っただけ。道志の山は初めてではない。9年前の12月に御正体山に行っていて、雪が積もる山塊といった印象は特に持ってはいなかった。
ここで、今回の予定コースだが、その前提として「赤鞍ヶ岳」は2つある。一つは東側の、地図上は無名峰1256.8mの三角点ピーク。これは昭文社マップには「1257.0m 赤鞍ヶ岳(ワラビタタキ)」とあり、西側には1299m標高点に「朝日山(赤鞍ヶ岳)」とある。1299mの方はさらに「赤鞍岳」という別名があるらしいが、以下、区分けの意味で、前者は「ワラビタタキ」、後者は「赤鞍ヶ岳」とする。ワラビタタキと赤鞍ヶ岳を経由して菜畑山(「なばたけうら」と読むらしい)を周回するのが今回の予定コース。雪のことは頭にないから、春山気分に浸れると能天気になっている。ちょっと暑くなりそうだし、汗もかくだろう。持参手ぬぐいは2枚か。ヒートテックは不要だな。気になったのはそんな程度のこと。
相模原インターを出て国道413号(道志みち)に入る。相模原の外れで後続車がコンビニに入ると、その後ろにいた車が急接近して来てずっとあおられ状態になった。狭くてカーブが連続し、上り下りを繰り返す国道だ。前の車とは普通の車間をとっている。真後ろの車はボンネットの前半分が隠れているくらいのくっつき方だ。対抗措置でしつこく急ブレーキを踏んだがその場しのぎですぐにまたあおってくる。それでいてクラクションを鳴らすやら追い抜きもしない。早朝から対向車も多く、先に行かす手ごろな路肩もないまま15kmほどこれが続いて「水源の森」駐車場に入れた。というか突っ込んだ。不快感でぐったりした。おかげで、駐車地手前の登山口入口の様子も確認できなかった。その間、道志村に入ると、道端に寄せた雪が多く、周辺の山々も白くなっていたことだけは印象に残っていて、これでは上はかなりの積雪かなぁと気になってはいた。そんなことより、このあおり運転、一般道で15km以上もやるとは、かなりのキチガイじゃないのか。おそらく、最初の後続車はコンビニに逃げ、次のターゲットは先行車だろう。
(コース入口が不明のままにここから上がってみると)
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(執拗なヤブになっていて)
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(道路に這い上がると富士山の白い頭が見えた。右の建物は小学校)
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気を取り直してようやく準備。さて、この先、どうやって登山口に行けばいいのか。あおりのおかげで周囲の様子を見る余裕はなかったので、取りあえずは国道を東に向かう。地図上は、大栗というところに短い実線が通り、その先が破線路になり、これを北上して行くようになっている。最寄りの破線路まで適当にショートカットしたいが、高い擁壁が続いている。運よくというか、しばらく歩いた先に擁壁上に出る階段があって、登ってみると、その先は激ヤブ地帯。踏み跡なし。上に道路らしきものが見えてはいるが、枝が邪魔してストックがひっかかったり、足にツルが巻きつくやらでさっぱり進まない。かなり強引に登るとあっけなく道路。すぐ先の国道から出てきているらしく、無駄なことをやってしまったようだ。早々に息切れがした。傍らには小さな社があり、道路からは富士山の白い頭が見えた。この先の期待感が高まって苦痛はすぐに消えた。
(相変わらず登山口がわからず徘徊する。上にガードレールが見える)
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(ようやく標識に出会った)
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歩きルートがはっきりしないままに林道のような道を登って行くと左に人家。右に作業道のような踏み跡があったので登る。すぐに車道が見え、ガードレールをよじ登る。さっきの道がカーブしていただけのことらしい。さて困った。ここからどうやって行くのか。まさか林道をずっと行くわけではあるまい。そもそもこの林道は地図にはない。
水道施設のようなものが見えたので何だろかと近づくと、ようやく「赤鞍ヶ岳登山口→」の標識が現れた。出発からここまでかなりの時間を費やしている。施設の脇の階段を登ると、その先は林の中に続く作業道のようになっている。ここから登山道が始まるようだ。
(最初は植林の中の作業道といった感じ)
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(歩きやすくはある)
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地形図を見る限り、この先、等高線がつまったところはない。さりとてなだらかなわけではなく、普通の尾根の勾配といった感じだ。いずれ送電線を通過して林道を横切ることになっている。上は軽い残雪があるかもしれない。ストックを出し、珍しくスパッツを巻く。この時点では万全な雪対策だ。いざとなったらチェーンスパイクもある。
樹林というか、植林混合の尾根になって、踏み跡に合わせてクネクネと登る。案外に歩きやすい。ところどころに雪がたまっていたりする。ダブルストックだと軽い傾斜も楽だ。樹間からチラチラと富士山が見える。今日はガツガツと慌てることはない。稜線に出れば青空バックの富士山を確実に楽しめる天気予報だ。それでいて、余計なチラ見富士を撮るまいと思っても、やはり撮ってしまう。
(鉄塔とこの先の尾根と稜線。右手の尾根から登って小ピークを越えてワラビタタキ。その左がウバガ岩だろう)
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鉄塔が見えた。普通の歩きなら、まず林道があって、その先に鉄塔といったパターンだが、ここは逆になっている。周辺が刈り払われた鉄塔のようだ。
この先の尾根伝いが望まれる。正面にはワラビタタキらしきピーク。その右のピークに一旦出て稜線に乗るようだ。そして、左がウバガ岩か。ここからでは岩峰といった感じはないが、地図を見ると、その南北には岩マークが記されている。
(鉄塔からの富士山。ここに登って来るだけでも価値がある。送電線がなければさらに良し)
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(ちょっと引くとススキが入ってしまう。でも、これが自然だろうな)
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話は前後するが、実は正面の尾根よりも左の秀麗富士を気にして見ていた。ワラビタタキの位置は二の次。あれっ、前回見た富士山よりも雪が多くなっている気がする。春分の日前後の雨は、こちらは雪だったのかなぁ。急いで鉄塔下に登り上げた。高圧線と目の前のススキが邪魔だが、なかなかの富士山だ。
(林道を越える)
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(林道の上もまたスポットになってはいるが、今回のスポットのカウントには入れない)
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冨士山見に時間をとられた。先に行くと、ここで舗装林道を越える。標識を見かけたが、この先、稜線に出るまで標識を見ることはなかった。それだけ明瞭な登山道なのだろう。鉄塔は標高770mあたり。出発地点は500mくらいだから300mも上がっていないが、ここからワラビタタキまではゆるやかに500mといったところだろうから、そんなに先が長くは感じていない。昭文社マップでチェックする。大栗バス停からワラビタタキまで1時間40分とある。ここまで40分。ワラビタタキまでの1/5ほどの距離も歩いていない。激ヤブ、道間違いがあったとしてもかかり過ぎている。あと1時間であのピークに立つのは無理。尾根は緩やかだからそんなにオーバータイムにもなるまいが。
(非常に感じの良い尾根。道型もしっかりしている)
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(この後、しばらくすっきり富士山はお預け)
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すっきりしなくなった富士山を見ながら登って行く。気持ちの良い緩やかな自然林の中の歩きが続く。つい、クリアな富士山が見えないものかとうろつく。この繰り返しで時間がどんどん経過していく。やはり今日は暑い。汗が出はじめ、ここでウインドブレーカーを脱ぐ。
(加入道山と大室山か)
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(道志の街並み。東方面につき逆光)
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一時的に植林に入ったがまた自然林に戻る。稜線がだいぶ近づいてきた。歩いて来た尾根を見下ろすと、正面にどっしりと構えた山がある。あれが加入道山か。となると、左後ろは大室山か。あちらの歩きも魅力がある。いずれ歩きたいものだ。
やがて、右下に道志の街並みが見えてくる。表記は失礼かもしれないが、谷あいの細長い町だ。この道志村、中心部が役場のあるところだとして、そこから駐車場に戻り、帰りは相模原に向かったが、県境近く、どこまでもポツリポツリと人家や施設が続いていた。
(雪が目立つようになる)
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(ゴトウ石。どう見てもいわれのある岩には思えない。標識ならともかく大胆にもペンキで直書きとは恐れ入る)
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登山道は尾根中央を通っていたり、トラバースのところもある。上がるに連れて雪が多くなったかなと思ったところで、目の前に「ゴトウ石 平成十四年●月十八日」と白ペンキで手書きされた大石が現れた。大石とはいっても、極端に大きなものではないが、周囲に石がゴロゴロ転がっている地帯ではなく、何でこれだけと思うような石の存在ではあるが、このゴトウ石の書き込み、自分には落書きのようにも見える。
(ケモノの足跡が点々としているだけ)
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雪の上に足跡がないのが気になった。昨日も晴れていたはず。歩いたハイカーはいなかったのか。たまにケモノの足跡を見るだけだ。やはりマイナーなコースなのだろうか。左手の富士山が絶えず気になっているが、鉄塔以来、すっきり富士の再現はない。
また植林帯に入り込む。自分は花粉症ではないのでよく知らないが、このヒノキとて、花粉症の方はこの中を歩いたらたまらないのではないのか。そんなことを考えていたら、やはり植林の中、残雪がやや深く、とはいってもくるぶし程度だが断続的になってきた。そろそろチェーンスパイクの出番としようか。せっかく持ってきたのだし。
(稜線は近いが急になってきた。登山道は消え、適当に登る)
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(とうとうこうなった。一応、ヒザレベルだが)
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歩きは幾分快適になったものの、登り斜面が急になったような気がする。植林帯は左半分になったり右になったりするが、雪は次第に深くなってきて、場所によってはヒザまでもぐってしまうところも出てくる。登山道はすでに雪の下に隠れ、適当にジグザグに登って行く。チェーンスパイクの効果はすぐになくなった。登りだからこそまだ感じてはいないが、下りでこのチェーンスパイクに苦労することになる。やはり失敗したようだ。せめて6本爪のプレート付きアイゼンを持って来るべきだった。念のためのチェーンスパイクではあったが、実のところ荷造りの際にアイゼンがどこかに隠れてしまい、チェーンスパイクで十分だろうと、そのままで来ていた。探す手間を省いたのは失策だった。ただ、この湿り気を帯びた雪にアイゼンとてどの程度の効果があったのか怪しいところだ。
(右からの尾根が合流し)
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(稜線の標識)
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なだらかになって最初のピークに到着かと思ったが、右からの尾根が合流しただけで、ピークはまだ先だ。雪がヒザ越えになったところでようやく標識が出てきた。右・東側は「巖道峠」、左手・西側は「赤鞍ヶ岳」となっている。とにかく稜線には出た。登りはまだ続いている。ここに至れば、トレースもあるだろうと甘い思いもあったが、東西のマイナールートを歩くハイカーはいない。ケモノの足跡すら消えてしまった。
(ワラビタタキ手前のピーク)
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(下るとすっきりした富士山が見えた)
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正面にピーク。あれがワラビタタキの手前ピークだろう。さらにノロ足になって何とか到着。赤テープが細い木に巻かれているピーク(だったかと思う)。ここは薄暗いのでそのまま下りかけると、いきなり左手の視界が開けた。オッ、これは絶景富士山だ。また時間をとられてしまった。こんな時間のとられ方はむしろ好ましいが。道志の山からの富士山もやはり捨てがたい。鳥ノ胸山からの富士山も素晴らしいらしい。おそらく視界には入っているだろうが、鳥ノ胸山はどれだろう。しかし、ここのところ富士山を追いかける回数が多くなっているが、何度見ても飽きない山だね。これがドライブがてらに見る富士山なら、どんなに大きくともたいした感動も出てこないのだが。
(左下は切れ落ちている)
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先を急ぐ。左手が気になる。富士山も良いが、下は切れ落ちているから要注意。もう富士山も枝が邪魔になってきたのでしばらくはお預けだろう。それでもしつこく見てしまう。
ワラビタタキが見えてくる。稜線伝いだから間違えることはないが、雪は依然としてヒザ。次第にチェーンスパイクが湿った雪の塊を作るようになってきた。足元もまた冬用でもないハイキング用の靴なので湿っぽくなっている。雪の中の歩きだから、特に気にはならないが歩みが遅くなるのはどうしようもない。ここで、一応の目的の一つであるワラビタタキに到着したら、装備不良でそのまま引き返すことも考えるようになっていた。ここまで富士山のビュースポットも2つあったことだし、一応は満足もしている。ワラビタタキ山頂からの富士山は期待できないようだし。
(雪が深くなったような感じはする)
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(目の前にヤブ)
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(ヤブの中は雪が深かった)
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(この感じが自分には於呂俱羅山風情だった。右隠れが加入道山、正面が大室山、その奥に見えるのは丹沢の檜洞山か? 蛭ヶ岳ではないだろう)
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登りにかかるとササのヤブになった。これはスズタケか? 細い道が一本といったところだが、雪のおかげでさらに狭い回廊になっていて、ここは通過に苦労する。雪も深く、滑りもする。ここだけはヒザ越えになった。何だか、日光の於呂俱羅山に登っているような感じになった。長い。
(ワラビタタキの山頂が近づくとアンテナが見えた)
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(後で知った雨量計施設)
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(ワラビタタキ山頂)
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(山名板と三角点標石を掘り起こす)
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ヤブが静まって平地。いきなり赤い「境界見出標」のブリキマーク。地図を見る。なるほど、ここの稜線は道志村と上野原市との境だし、西側は都留市との境になっている。大月の秀麗富嶽が入り込む余地はない。右手に何やらアンテナポールのような人工施設が見える。雪があるので、わざわざ確認に行くことはできないが、帰ってから調べると雨量計だったようだ。
ワラビタタキ山頂に到着。ここまで2時間半近くかっている。コースタイム1時間40分に比べれば目もあてられないオーバータイムだ。道迷い、雪、冨士見にかけたロスタイムでは言い訳もつくまい。まぁ、いろんな状況もある。これはこれでいいでしょう。手ぬぐいを出して顔と頭の汗を拭く。山頂の雪を舐めてノドをうるおす。
山頂は雪で断言できかねるが広い感じだ。山名板が雪で頭だけ出している。掘り起こすと隣に三角点標石があった。山名板には手書きの「赤鞍ヶ岳」。ここまで「ワラビタタキ」の標識はまったく見かけなかった。もはや死語の山名になっているのだろうか。ところでワラビタタキの由来は何だろう。ワラビをおいしく食べるか苦みを取るためにここで叩いたのか。自分の想像は貧相だ。
山頂周囲は木立で富士山の姿は見えない。さて、どうしよう。この先、トレースもない。まぁ、あったからといって、せいぜいヒザまでの積雪だ。稜線伝いにずっと歩けるだろう。雪がさらに深くなるのはここまでの歩きで想定しにくい。だが、当初予定の菜畑山まで行くのはまず無理。となると、赤鞍ヶ岳の手前の秋山峠から南下して下るルートがある。尾根通しだから、トレースの有無は気にせずに下れそうだ。
チョコレートと羊羹を腹に入れる。ここ、雪がなかったらゆっくりもできようが、シートも忘れ、座れる場所もない。一服して赤鞍ヶ岳に向かう。万一、雪が深くなったら戻ればいい。できれば戻りたくはない。足の裏に泥と雪のダンゴの塊りを付けての下りはかなり危ない。
(ワラビタタキを下る。正面に富士山の頭)
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尾根筋は明瞭。自然林がまばらで、雪がなければ気持ちの良い歩きができそうなところだ。右手の視界も開け、大月の町やその奥に八ヶ岳、南アルプスの白い峰々が見える。ただこれもまた樹間を通しての景色だ。ここで思い出したようにサングラスにする。実は数週間前に眼の手術をして、まだ山歩きをするには無理があるのだが、それを無理にやって来た。せめて紫外線の直射き避けねばなるまい。
(ウバガ岩)
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(松を入れて)
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(松を外して。左に山中湖に続く道志みちが見えている)
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(しつこいが、道志みちはこちらがはっきり見えるか)
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尾根が狭くなり、岩がゴツゴツしてきた。先に松が数本あるピークがある。あそこは展望が良さそうだ。これが本日第3のスポット。ウバガ岩。雪で様子はよくわからないが、岩峰なのだろう。この先、秋山峠も含めて4つの富士見スポットがあったが、自分としては、ウバガ岩からの富士山が最高だった。松を入れてもグッド、松を消してもなかなかのもの。自分が気に入ったのは、道志みちが富士山に向かって走り、その周辺に里がずっと遠くまで続いている風景で、こういう抱き合わせの富士山を見たかった。あの先には山中湖があるのだろう。残念ながら山中湖は見えない。
(正面の一番高いのが赤鞍ヶ岳だろう)
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この稜線は今倉山で分かれ、御正体山までずっと続いているようだ。歩いてみたいと思っているが、今は雪でその気分になれない。せいぜい、この先の一番高いピークが赤鞍ヶ岳であることを確認するだけで十分だ。大満足して先に下る。やはり岩場のようで、注意しながらの下りになった。まだ尾根はヤセまではいかずとも細めだし、強風の時は要注意だろう。
(下る。雪の下はガレになっているのだろうか)
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(この辺は岩場か。別に危険は感じないが)
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(大菩薩嶺かと思った山)
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尾根はしばらくゴツゴツ地帯が続く。アップダウンも続く。右手遠くに見える高いピークは大菩薩嶺だろうか。大菩薩といえば、K女、I男らと下の宿に泊まった際、痔の軟膏と歯磨きを間違えて塗ってしまったことを思い出してはいつも苦笑する。次第に尾根幅も復帰し、少しばかり雪が深くなる。たまにヒザ上になるところも出てきた。もうツボ足歩きと同じになっていて、さっさと先に進まない。
(1232m標高点あたり)
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小高い、ちょっと広いところに出た。ここは1232m標高点あたり。棒状の小さな木の杭があった。これはせいぜい尻の面積の1/15をカバーする程度のもので、座りづらかったが、突っ立ったままよりはましと、これに腰をあてて菓子パンを食べる。地図を広げる。ワラビタタキから秋山峠までのコースタイムは55分か。ほぼ中間点のここまで35分ほどかかっている。極端な遅れではないが、やはり菜畑山は無理かなぁ。どうも、この辺では菜畑山がメジャーっぽいから、トレースもばっちりといった感じがするけど、やはりダメかなぁ。今日行けないと、また来なきゃならなくなる。悩むところだが、目先の赤鞍ヶ岳に行っての様子見か。こんなことを考えるようになったのも、このヒザレベルの積雪の歩きに慣れてきたせいもあるのだろう。だが、こんなところをチェーンスパイクで歩くのは無謀といえば無謀だ。雪崩の心配はないが、凍結でもしていたら滑落の危険もある。
遠くから発砲音が聞こえる。ここにも、狩猟期過ぎの例外があるようだ。
(雪のせいか、行く先の尾根はきれいに見えている)
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ケモノの足跡が再び現れるが、単独行動のシカのようで頼りにはならない。目の前のピークが高く感じる。気温とともに雪は緩くなって、登り斜面の足元は不安定だ。ズルっといくところもある。雪はヒザ下に少なくなった。
赤鞍ヶ岳まではまだまだある。小ピーク越えが続く。その間の富士山は待機してくれてはいるがすっきりしているところはない。どうしても樹が邪魔になる。もうこの辺になると、ウバガ岩から見えた道志みち沿いの谷あいの街並みは隠れてしまっている。御正体山が次第に大きくなっている。
(チラリと富士山)
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(赤鞍ヶ岳だろうか。いや、あそこは秋山峠だったみたい)
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(見づらいが、向こうからやって来て引き返したトレースが現れた)
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のんびり歩きになってしまった。チラ見の富士山を左に眺めながら、緩やかな起伏を歩いて行くのもいい気分だ。ここまで、あれか、あれかと思いながらだまされていた赤鞍ヶ岳も目前になった。秋山峠はもうすぐだ。
何と、トレースが現れてびっくりした。ここで引き返している。往復分として3~4人分か。昨日のだろう。足跡にはしっかりとアイゼンの型が残っている。いずれも8本から12本。こうでなきゃなとは思っても、ここで引き返しているわけだから、根性がないんじゃないのか。何も予想せずにここまで来た立場だから言える。おそらく、秋山峠からワラビタキ方面に向かい、雪が深いからやめるか、といったところだろう。ということは、秋山峠からの下山道にはトレースがあるということだろう。菜畑山に行く云々はともかくも、ここで下山ルートは確保されているようだとほっとした。
(秋山峠)
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トレースがあったところで、この水気のある雪では大助かりになるわけでもない。ただ、気分的には楽だ。トレースを見てから3分後には秋山峠に到着した。
「秋山峠」の標識はない。来た方向には「巖道峠方面」、先は「赤鞍ヶ岳方面」、そして左手の下山方向には「竹之本下山方面(道志村役場周辺)」とある。「ワラビタタキ」はない。「役場周辺」というのがアバウトすぎる。途中から適当に歩けということらしい。竹之本というのは、地図を見ると役場周辺の地名になっている。そちらを見ると、予想通りにトレースだらけでしっかりした雪道になっているが、結構、急そうだ。いずれにせよ、ここからは問題なく下れることはわかった。
(秋山峠からの富士山)
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(赤鞍ヶ岳に向かう)
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(赤鞍ヶ岳山頂)
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ここからの富士山が第4スポット。目の前のススキと枝ヤブがどうにも邪魔だが、撮り方によっては良い添え物かもしれない。道志みちはもう隠れてしまっている。またここに戻って来る確率は高いが、ヤブに入り込んでは何度も写真に収めたりした。
赤鞍ヶ岳はすぐそこだ。雪もなければ5分もかかるまい。山頂に到着。標識があるだけの広い山頂だ。三角点峰ではないから標石を探すこともない。ここの標識は3方向。左に「菜畑山」、右は「棚の入山」、そして秋山峠方面はあくまでも「巖道峠」となっている。随分と律義だ。この「棚の入山」方面だが、倉岳山から高畑山を経由して下った際、雛鶴峠で南に向けた赤鞍ヶ岳の標識を見ていて、そんなことで赤鞍ヶ岳に興味を持ったということもあるのだが、そちらに下るルートだろう。
(菜畑山方面。やはりトレースなし。他人のことは言えない。この先は遠慮する)
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山頂からの富士山は樹間通し。すっきりと見えなきゃ長居は無用。さてと、菜畑峠の方面のルートを覗きに行く。トレースはなかった。何だ、昨日あたりのハイカーはみんな赤鞍ヶ岳往復でおしまいか。秋山峠から富士山を眺めて終わりではだらしがねぇなと思いつつ、トレースがないんじゃと、秋山峠にそそくさと引き返す。菜畑山は改めての訪問になった。
(秋山峠に戻って改めてちょいパチリ。実際はこれくらいの大きさに見えている。つい富士山は引いて撮る癖がついている。広角でも持っていればいいが)
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秋山峠でさっきと同じ繰り返し。しつこく同じような富士山ばかりを撮る。危なっかしく足跡のないところまで行っても、樹に登らない限り、目の前のススキやら枝が障害物になる。
もうかなり暑い。フリースを脱いでシャツ一枚になる。ここも腰かけるところもなく、立ったままでおにぎりを食べ、そろそろ下山することにする。富士山も都合4スポット。途中で下山しようかと思ったりしたことを考えれば、今日の富士山見物も、まぁ満足でしょう。
(トレースバッチリの下り。少し先までは安泰だった)
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(こうなると始末が悪い。泥を拾わないわけがない)
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予想はしていたが、いきなり、つらい下りになってしまった。この辺の雪はくるぶし程度で、さらに昨日あたりのハイカーが歩いている。そして、気温が高くなって、条件の悪い雪混じり状態での下りになった。なまじノートレースの方が良かったようだが、これしかないチェーンスパイクを外すには不安だ。
触りの部分はまだ良かった。トレースの下に地面は出ていない。チェーンスパイクが土を拾うこともなかったが、こちらは雪が少ないのか、次第に草付きの地面が出てきてそのうちに泥化してきた。こうなると、雪が接着剤の役目を果たして、靴の下はダンゴ状になってくる。高下駄になって何とも歩きづらく、樹に足を叩いては塊を落とす。斜面は急で、ところどころにロープもあって、ロープ頼りの方がむしろ安全だ。
(もう雪の心配は無用か)
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(植林の中にはまだある)
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こんな状態がしばらく続く。さっさとチェーンスパイクを外したいが、雪はまだ続いていて、今のところ泥だらけのチェーンスパイクに手をかけたくもない。
植林帯に入り込む。雪はくるぶしほどになった。もういいだろう。チェーンスパイクを外してほっとした。最初からそうすれば良かった。アイゼンだったら、ここまでの苦痛もなかったろう。
(入道山なのだが、加入道山と何か関係があるのか? 山名のイメージから石祠でもありそうだが何もなかった)
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下り一辺倒が登りにかかる。979m標高点ピークのようだ。昭文社マップには、この山は「入道山」となっていて「巻き道」と記されている。巻き道は目に入らずにそのまま直登したが、何かがあるピークでもなく、ただの平凡なピーク。標識も山名板もない。
尾根筋をどんどん下って行く。もう雪はない。ここもまた標識のないコースだ。はっきりした道筋もあって、紛らわしいところはない。ここからも富士山は見えてはいるが、枝木ですっきりした姿を望むことはもはやできないか。それでも、登った時と同様に、つい撮ってしまう。
(町が見えてくる)
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(道筋は明瞭)
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(アップにすれば、撮れはするが)
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(急な下りになった)
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(標識が出てきてコンニチワか)
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(林道)
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植林の下部は急になっていて、道は先端部を巻いている。見下ろすと下れそうなのでそのまま下ったが、かえって手間と時間がかかってしまった。そして「赤鞍ヶ岳」への標識を見る。半端な位置にある。その下には鉄塔巡視路の標識。そして、真下に林道。林道の傍らにも赤鞍ヶ岳の標識があった。この辺は下から標識頼りに登ると紛らわしいところかもしれない。現に、地図の破線路に合わせて下るつもりでいたが、道筋通りの下りはならず、実線林道の西側に出てしまっていた。
(ここを下ってみたら)
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(ヤブの先には堰堤があり)
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(フェンスを開けて林道に出る)
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未舗装林道で大きな石にようやく腰をゆったりと落ち着かせて座ることができた。おにぎりを食べて昼食。さて、ここから林道を東に破線路合流までと思ったが、上りになっているので、適当なところから町に出ようと、右に歩く。すぐに左を覗き込むと緩い谷状になっている。入り込む。ショートカットのつもりでいたが、倒木が多くて歩きづらく、堰堤越えもあった。フェンスを開けて林道に出たのはいいが、余計に時間がかかったようだ。
(地図には鳥居マークがある。あれが神社の屋根っぽい)
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(若宮八幡)
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(路地を下ると)
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(道志村役場に出た)
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よせばいいのに、神社のようなものが見えたのでまたショートカットをする。ここもまた簡単にはいかなかった。ヤブに遭遇して神社に出はしたが、最後は畑の中を歩いた。
この神社、若宮八幡というらしい。隣接して神楽殿。階段下には鳥居。ここは路地になっていて、すぐに国道に出たが、右の建物は道志村役場だった。この前にも利用可能な駐車場はある。ただ、ちょっと見た限り、赤鞍ヶ岳に向かう標識は見かけず、やはり秋山峠にあった「道志村役場周辺」という標識は適格な表記なのかもしれない。
(国道歩き)
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(さも「道志みち」といった風情だが、見た石仏はこれだけ)
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(駐車場に帰着。暑い)
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国道を東に向かう。交通量は多い。陽気のせいか、バイクと自転車が目立つ。すぐに左手に小学校が見え、その隣の駐車場に到着。水源の森そのものは、もう閉鎖されているようだ。
せいぜい6時間ほどの歩きだったが、今日は長く感じた。雪のせいか、暑さのせいなのか少しぐったりした。車載の温度計は17℃になっている。身体が汗でベタベタして不快。風呂屋に寄りたいところだが、あいにく立ち寄り湯の趣味がないため替え下着は用意していない。帰路も長いし、そのまま帰ることにする。
帰り道、またあおられになったら嫌だなと思ったが、運よく先行車は制限速度で走っていて、後続車はいない。むしろ、細い道を走る自転車が目障りだがようやく周囲の景色を見ながら帰ることができた。
(本日の軌跡)
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「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
道志水源の森駐車場(6:56)……標識発見(7:08)……鉄塔(7:29)……林道横切り(7:34)……チェーンスパイクを履く・標高1010mあたり(8:19)……ワラビタタキ(9:21~9:34)……ウバガ岩(9:45)……標高1232m付近(10:10~10:17)……秋山峠(11:00)……赤鞍ヶ岳(11:08~11:11)……秋山峠(11:17~11:29)……979m標高点付近・入道山(12:00)……林道(12:22~12:35)……村役場・国道(12:51)……駐車場(13:02)
大月の山よりももうちょい近くで、そして三ツ峠山に邪魔されない富士山を見たいと、道志方面の山に行くつもりでいたが、出発間際までそれなりに悩んでいた。先ずは行く日。土曜日予定でいたが、晴れてはいても雲が多めの土曜日よりも日曜日の方が快晴に近い。翌日の月曜日に疲れが残るかもと土曜日にしたのだが、行ったはいいが富士山を拝めないのでは意味がない。日曜の用事を土曜日に前倒しして日曜日に変更。肝心なのは歩くコースだ。これは道志からは外れて都留方面になるが、道坂トンネルから今倉山経由で二十六夜山往復。もう一案はマイナーっぽい感じがしたが、ワラビタタキから赤鞍ヶ岳を経由して菜畑山に至るコース。出発直前で後者にした。理由は自宅からのアクセス。道坂トンネルでは中央道で都留まで行かなきゃならない。後者コース選択なら一般道は長いが圏央道のまま相模原ICで済む。帰りの渋滞のことも考慮した。
この時点では、道志の山は大月よりも南だし、まさか雪があるとは思いもせずに出向いた。まして今週は日を追うごとに暖かくなりそうだし、敢えて雪山装備の類といえば、用心用のチェーンスパイクを持っただけ。道志の山は初めてではない。9年前の12月に御正体山に行っていて、雪が積もる山塊といった印象は特に持ってはいなかった。
ここで、今回の予定コースだが、その前提として「赤鞍ヶ岳」は2つある。一つは東側の、地図上は無名峰1256.8mの三角点ピーク。これは昭文社マップには「1257.0m 赤鞍ヶ岳(ワラビタタキ)」とあり、西側には1299m標高点に「朝日山(赤鞍ヶ岳)」とある。1299mの方はさらに「赤鞍岳」という別名があるらしいが、以下、区分けの意味で、前者は「ワラビタタキ」、後者は「赤鞍ヶ岳」とする。ワラビタタキと赤鞍ヶ岳を経由して菜畑山(「なばたけうら」と読むらしい)を周回するのが今回の予定コース。雪のことは頭にないから、春山気分に浸れると能天気になっている。ちょっと暑くなりそうだし、汗もかくだろう。持参手ぬぐいは2枚か。ヒートテックは不要だな。気になったのはそんな程度のこと。
相模原インターを出て国道413号(道志みち)に入る。相模原の外れで後続車がコンビニに入ると、その後ろにいた車が急接近して来てずっとあおられ状態になった。狭くてカーブが連続し、上り下りを繰り返す国道だ。前の車とは普通の車間をとっている。真後ろの車はボンネットの前半分が隠れているくらいのくっつき方だ。対抗措置でしつこく急ブレーキを踏んだがその場しのぎですぐにまたあおってくる。それでいてクラクションを鳴らすやら追い抜きもしない。早朝から対向車も多く、先に行かす手ごろな路肩もないまま15kmほどこれが続いて「水源の森」駐車場に入れた。というか突っ込んだ。不快感でぐったりした。おかげで、駐車地手前の登山口入口の様子も確認できなかった。その間、道志村に入ると、道端に寄せた雪が多く、周辺の山々も白くなっていたことだけは印象に残っていて、これでは上はかなりの積雪かなぁと気になってはいた。そんなことより、このあおり運転、一般道で15km以上もやるとは、かなりのキチガイじゃないのか。おそらく、最初の後続車はコンビニに逃げ、次のターゲットは先行車だろう。
(コース入口が不明のままにここから上がってみると)

(執拗なヤブになっていて)

(道路に這い上がると富士山の白い頭が見えた。右の建物は小学校)

気を取り直してようやく準備。さて、この先、どうやって登山口に行けばいいのか。あおりのおかげで周囲の様子を見る余裕はなかったので、取りあえずは国道を東に向かう。地図上は、大栗というところに短い実線が通り、その先が破線路になり、これを北上して行くようになっている。最寄りの破線路まで適当にショートカットしたいが、高い擁壁が続いている。運よくというか、しばらく歩いた先に擁壁上に出る階段があって、登ってみると、その先は激ヤブ地帯。踏み跡なし。上に道路らしきものが見えてはいるが、枝が邪魔してストックがひっかかったり、足にツルが巻きつくやらでさっぱり進まない。かなり強引に登るとあっけなく道路。すぐ先の国道から出てきているらしく、無駄なことをやってしまったようだ。早々に息切れがした。傍らには小さな社があり、道路からは富士山の白い頭が見えた。この先の期待感が高まって苦痛はすぐに消えた。
(相変わらず登山口がわからず徘徊する。上にガードレールが見える)

(ようやく標識に出会った)

歩きルートがはっきりしないままに林道のような道を登って行くと左に人家。右に作業道のような踏み跡があったので登る。すぐに車道が見え、ガードレールをよじ登る。さっきの道がカーブしていただけのことらしい。さて困った。ここからどうやって行くのか。まさか林道をずっと行くわけではあるまい。そもそもこの林道は地図にはない。
水道施設のようなものが見えたので何だろかと近づくと、ようやく「赤鞍ヶ岳登山口→」の標識が現れた。出発からここまでかなりの時間を費やしている。施設の脇の階段を登ると、その先は林の中に続く作業道のようになっている。ここから登山道が始まるようだ。
(最初は植林の中の作業道といった感じ)

(歩きやすくはある)

地形図を見る限り、この先、等高線がつまったところはない。さりとてなだらかなわけではなく、普通の尾根の勾配といった感じだ。いずれ送電線を通過して林道を横切ることになっている。上は軽い残雪があるかもしれない。ストックを出し、珍しくスパッツを巻く。この時点では万全な雪対策だ。いざとなったらチェーンスパイクもある。
樹林というか、植林混合の尾根になって、踏み跡に合わせてクネクネと登る。案外に歩きやすい。ところどころに雪がたまっていたりする。ダブルストックだと軽い傾斜も楽だ。樹間からチラチラと富士山が見える。今日はガツガツと慌てることはない。稜線に出れば青空バックの富士山を確実に楽しめる天気予報だ。それでいて、余計なチラ見富士を撮るまいと思っても、やはり撮ってしまう。
(鉄塔とこの先の尾根と稜線。右手の尾根から登って小ピークを越えてワラビタタキ。その左がウバガ岩だろう)

鉄塔が見えた。普通の歩きなら、まず林道があって、その先に鉄塔といったパターンだが、ここは逆になっている。周辺が刈り払われた鉄塔のようだ。
この先の尾根伝いが望まれる。正面にはワラビタタキらしきピーク。その右のピークに一旦出て稜線に乗るようだ。そして、左がウバガ岩か。ここからでは岩峰といった感じはないが、地図を見ると、その南北には岩マークが記されている。
(鉄塔からの富士山。ここに登って来るだけでも価値がある。送電線がなければさらに良し)

(ちょっと引くとススキが入ってしまう。でも、これが自然だろうな)

話は前後するが、実は正面の尾根よりも左の秀麗富士を気にして見ていた。ワラビタタキの位置は二の次。あれっ、前回見た富士山よりも雪が多くなっている気がする。春分の日前後の雨は、こちらは雪だったのかなぁ。急いで鉄塔下に登り上げた。高圧線と目の前のススキが邪魔だが、なかなかの富士山だ。
(林道を越える)

(林道の上もまたスポットになってはいるが、今回のスポットのカウントには入れない)

冨士山見に時間をとられた。先に行くと、ここで舗装林道を越える。標識を見かけたが、この先、稜線に出るまで標識を見ることはなかった。それだけ明瞭な登山道なのだろう。鉄塔は標高770mあたり。出発地点は500mくらいだから300mも上がっていないが、ここからワラビタタキまではゆるやかに500mといったところだろうから、そんなに先が長くは感じていない。昭文社マップでチェックする。大栗バス停からワラビタタキまで1時間40分とある。ここまで40分。ワラビタタキまでの1/5ほどの距離も歩いていない。激ヤブ、道間違いがあったとしてもかかり過ぎている。あと1時間であのピークに立つのは無理。尾根は緩やかだからそんなにオーバータイムにもなるまいが。
(非常に感じの良い尾根。道型もしっかりしている)

(この後、しばらくすっきり富士山はお預け)

すっきりしなくなった富士山を見ながら登って行く。気持ちの良い緩やかな自然林の中の歩きが続く。つい、クリアな富士山が見えないものかとうろつく。この繰り返しで時間がどんどん経過していく。やはり今日は暑い。汗が出はじめ、ここでウインドブレーカーを脱ぐ。
(加入道山と大室山か)

(道志の街並み。東方面につき逆光)

一時的に植林に入ったがまた自然林に戻る。稜線がだいぶ近づいてきた。歩いて来た尾根を見下ろすと、正面にどっしりと構えた山がある。あれが加入道山か。となると、左後ろは大室山か。あちらの歩きも魅力がある。いずれ歩きたいものだ。
やがて、右下に道志の街並みが見えてくる。表記は失礼かもしれないが、谷あいの細長い町だ。この道志村、中心部が役場のあるところだとして、そこから駐車場に戻り、帰りは相模原に向かったが、県境近く、どこまでもポツリポツリと人家や施設が続いていた。
(雪が目立つようになる)

(ゴトウ石。どう見てもいわれのある岩には思えない。標識ならともかく大胆にもペンキで直書きとは恐れ入る)

登山道は尾根中央を通っていたり、トラバースのところもある。上がるに連れて雪が多くなったかなと思ったところで、目の前に「ゴトウ石 平成十四年●月十八日」と白ペンキで手書きされた大石が現れた。大石とはいっても、極端に大きなものではないが、周囲に石がゴロゴロ転がっている地帯ではなく、何でこれだけと思うような石の存在ではあるが、このゴトウ石の書き込み、自分には落書きのようにも見える。
(ケモノの足跡が点々としているだけ)

雪の上に足跡がないのが気になった。昨日も晴れていたはず。歩いたハイカーはいなかったのか。たまにケモノの足跡を見るだけだ。やはりマイナーなコースなのだろうか。左手の富士山が絶えず気になっているが、鉄塔以来、すっきり富士の再現はない。
また植林帯に入り込む。自分は花粉症ではないのでよく知らないが、このヒノキとて、花粉症の方はこの中を歩いたらたまらないのではないのか。そんなことを考えていたら、やはり植林の中、残雪がやや深く、とはいってもくるぶし程度だが断続的になってきた。そろそろチェーンスパイクの出番としようか。せっかく持ってきたのだし。
(稜線は近いが急になってきた。登山道は消え、適当に登る)

(とうとうこうなった。一応、ヒザレベルだが)

歩きは幾分快適になったものの、登り斜面が急になったような気がする。植林帯は左半分になったり右になったりするが、雪は次第に深くなってきて、場所によってはヒザまでもぐってしまうところも出てくる。登山道はすでに雪の下に隠れ、適当にジグザグに登って行く。チェーンスパイクの効果はすぐになくなった。登りだからこそまだ感じてはいないが、下りでこのチェーンスパイクに苦労することになる。やはり失敗したようだ。せめて6本爪のプレート付きアイゼンを持って来るべきだった。念のためのチェーンスパイクではあったが、実のところ荷造りの際にアイゼンがどこかに隠れてしまい、チェーンスパイクで十分だろうと、そのままで来ていた。探す手間を省いたのは失策だった。ただ、この湿り気を帯びた雪にアイゼンとてどの程度の効果があったのか怪しいところだ。
(右からの尾根が合流し)

(稜線の標識)

なだらかになって最初のピークに到着かと思ったが、右からの尾根が合流しただけで、ピークはまだ先だ。雪がヒザ越えになったところでようやく標識が出てきた。右・東側は「巖道峠」、左手・西側は「赤鞍ヶ岳」となっている。とにかく稜線には出た。登りはまだ続いている。ここに至れば、トレースもあるだろうと甘い思いもあったが、東西のマイナールートを歩くハイカーはいない。ケモノの足跡すら消えてしまった。
(ワラビタタキ手前のピーク)

(下るとすっきりした富士山が見えた)

正面にピーク。あれがワラビタタキの手前ピークだろう。さらにノロ足になって何とか到着。赤テープが細い木に巻かれているピーク(だったかと思う)。ここは薄暗いのでそのまま下りかけると、いきなり左手の視界が開けた。オッ、これは絶景富士山だ。また時間をとられてしまった。こんな時間のとられ方はむしろ好ましいが。道志の山からの富士山もやはり捨てがたい。鳥ノ胸山からの富士山も素晴らしいらしい。おそらく視界には入っているだろうが、鳥ノ胸山はどれだろう。しかし、ここのところ富士山を追いかける回数が多くなっているが、何度見ても飽きない山だね。これがドライブがてらに見る富士山なら、どんなに大きくともたいした感動も出てこないのだが。
(左下は切れ落ちている)

先を急ぐ。左手が気になる。富士山も良いが、下は切れ落ちているから要注意。もう富士山も枝が邪魔になってきたのでしばらくはお預けだろう。それでもしつこく見てしまう。
ワラビタタキが見えてくる。稜線伝いだから間違えることはないが、雪は依然としてヒザ。次第にチェーンスパイクが湿った雪の塊を作るようになってきた。足元もまた冬用でもないハイキング用の靴なので湿っぽくなっている。雪の中の歩きだから、特に気にはならないが歩みが遅くなるのはどうしようもない。ここで、一応の目的の一つであるワラビタタキに到着したら、装備不良でそのまま引き返すことも考えるようになっていた。ここまで富士山のビュースポットも2つあったことだし、一応は満足もしている。ワラビタタキ山頂からの富士山は期待できないようだし。
(雪が深くなったような感じはする)

(目の前にヤブ)

(ヤブの中は雪が深かった)

(この感じが自分には於呂俱羅山風情だった。右隠れが加入道山、正面が大室山、その奥に見えるのは丹沢の檜洞山か? 蛭ヶ岳ではないだろう)

登りにかかるとササのヤブになった。これはスズタケか? 細い道が一本といったところだが、雪のおかげでさらに狭い回廊になっていて、ここは通過に苦労する。雪も深く、滑りもする。ここだけはヒザ越えになった。何だか、日光の於呂俱羅山に登っているような感じになった。長い。
(ワラビタタキの山頂が近づくとアンテナが見えた)

(後で知った雨量計施設)

(ワラビタタキ山頂)

(山名板と三角点標石を掘り起こす)

ヤブが静まって平地。いきなり赤い「境界見出標」のブリキマーク。地図を見る。なるほど、ここの稜線は道志村と上野原市との境だし、西側は都留市との境になっている。大月の秀麗富嶽が入り込む余地はない。右手に何やらアンテナポールのような人工施設が見える。雪があるので、わざわざ確認に行くことはできないが、帰ってから調べると雨量計だったようだ。
ワラビタタキ山頂に到着。ここまで2時間半近くかっている。コースタイム1時間40分に比べれば目もあてられないオーバータイムだ。道迷い、雪、冨士見にかけたロスタイムでは言い訳もつくまい。まぁ、いろんな状況もある。これはこれでいいでしょう。手ぬぐいを出して顔と頭の汗を拭く。山頂の雪を舐めてノドをうるおす。
山頂は雪で断言できかねるが広い感じだ。山名板が雪で頭だけ出している。掘り起こすと隣に三角点標石があった。山名板には手書きの「赤鞍ヶ岳」。ここまで「ワラビタタキ」の標識はまったく見かけなかった。もはや死語の山名になっているのだろうか。ところでワラビタタキの由来は何だろう。ワラビをおいしく食べるか苦みを取るためにここで叩いたのか。自分の想像は貧相だ。
山頂周囲は木立で富士山の姿は見えない。さて、どうしよう。この先、トレースもない。まぁ、あったからといって、せいぜいヒザまでの積雪だ。稜線伝いにずっと歩けるだろう。雪がさらに深くなるのはここまでの歩きで想定しにくい。だが、当初予定の菜畑山まで行くのはまず無理。となると、赤鞍ヶ岳の手前の秋山峠から南下して下るルートがある。尾根通しだから、トレースの有無は気にせずに下れそうだ。
チョコレートと羊羹を腹に入れる。ここ、雪がなかったらゆっくりもできようが、シートも忘れ、座れる場所もない。一服して赤鞍ヶ岳に向かう。万一、雪が深くなったら戻ればいい。できれば戻りたくはない。足の裏に泥と雪のダンゴの塊りを付けての下りはかなり危ない。
(ワラビタタキを下る。正面に富士山の頭)

尾根筋は明瞭。自然林がまばらで、雪がなければ気持ちの良い歩きができそうなところだ。右手の視界も開け、大月の町やその奥に八ヶ岳、南アルプスの白い峰々が見える。ただこれもまた樹間を通しての景色だ。ここで思い出したようにサングラスにする。実は数週間前に眼の手術をして、まだ山歩きをするには無理があるのだが、それを無理にやって来た。せめて紫外線の直射き避けねばなるまい。
(ウバガ岩)

(松を入れて)

(松を外して。左に山中湖に続く道志みちが見えている)

(しつこいが、道志みちはこちらがはっきり見えるか)

尾根が狭くなり、岩がゴツゴツしてきた。先に松が数本あるピークがある。あそこは展望が良さそうだ。これが本日第3のスポット。ウバガ岩。雪で様子はよくわからないが、岩峰なのだろう。この先、秋山峠も含めて4つの富士見スポットがあったが、自分としては、ウバガ岩からの富士山が最高だった。松を入れてもグッド、松を消してもなかなかのもの。自分が気に入ったのは、道志みちが富士山に向かって走り、その周辺に里がずっと遠くまで続いている風景で、こういう抱き合わせの富士山を見たかった。あの先には山中湖があるのだろう。残念ながら山中湖は見えない。
(正面の一番高いのが赤鞍ヶ岳だろう)

この稜線は今倉山で分かれ、御正体山までずっと続いているようだ。歩いてみたいと思っているが、今は雪でその気分になれない。せいぜい、この先の一番高いピークが赤鞍ヶ岳であることを確認するだけで十分だ。大満足して先に下る。やはり岩場のようで、注意しながらの下りになった。まだ尾根はヤセまではいかずとも細めだし、強風の時は要注意だろう。
(下る。雪の下はガレになっているのだろうか)

(この辺は岩場か。別に危険は感じないが)

(大菩薩嶺かと思った山)

尾根はしばらくゴツゴツ地帯が続く。アップダウンも続く。右手遠くに見える高いピークは大菩薩嶺だろうか。大菩薩といえば、K女、I男らと下の宿に泊まった際、痔の軟膏と歯磨きを間違えて塗ってしまったことを思い出してはいつも苦笑する。次第に尾根幅も復帰し、少しばかり雪が深くなる。たまにヒザ上になるところも出てきた。もうツボ足歩きと同じになっていて、さっさと先に進まない。
(1232m標高点あたり)

小高い、ちょっと広いところに出た。ここは1232m標高点あたり。棒状の小さな木の杭があった。これはせいぜい尻の面積の1/15をカバーする程度のもので、座りづらかったが、突っ立ったままよりはましと、これに腰をあてて菓子パンを食べる。地図を広げる。ワラビタタキから秋山峠までのコースタイムは55分か。ほぼ中間点のここまで35分ほどかかっている。極端な遅れではないが、やはり菜畑山は無理かなぁ。どうも、この辺では菜畑山がメジャーっぽいから、トレースもばっちりといった感じがするけど、やはりダメかなぁ。今日行けないと、また来なきゃならなくなる。悩むところだが、目先の赤鞍ヶ岳に行っての様子見か。こんなことを考えるようになったのも、このヒザレベルの積雪の歩きに慣れてきたせいもあるのだろう。だが、こんなところをチェーンスパイクで歩くのは無謀といえば無謀だ。雪崩の心配はないが、凍結でもしていたら滑落の危険もある。
遠くから発砲音が聞こえる。ここにも、狩猟期過ぎの例外があるようだ。
(雪のせいか、行く先の尾根はきれいに見えている)

ケモノの足跡が再び現れるが、単独行動のシカのようで頼りにはならない。目の前のピークが高く感じる。気温とともに雪は緩くなって、登り斜面の足元は不安定だ。ズルっといくところもある。雪はヒザ下に少なくなった。
赤鞍ヶ岳まではまだまだある。小ピーク越えが続く。その間の富士山は待機してくれてはいるがすっきりしているところはない。どうしても樹が邪魔になる。もうこの辺になると、ウバガ岩から見えた道志みち沿いの谷あいの街並みは隠れてしまっている。御正体山が次第に大きくなっている。
(チラリと富士山)

(赤鞍ヶ岳だろうか。いや、あそこは秋山峠だったみたい)

(見づらいが、向こうからやって来て引き返したトレースが現れた)

のんびり歩きになってしまった。チラ見の富士山を左に眺めながら、緩やかな起伏を歩いて行くのもいい気分だ。ここまで、あれか、あれかと思いながらだまされていた赤鞍ヶ岳も目前になった。秋山峠はもうすぐだ。
何と、トレースが現れてびっくりした。ここで引き返している。往復分として3~4人分か。昨日のだろう。足跡にはしっかりとアイゼンの型が残っている。いずれも8本から12本。こうでなきゃなとは思っても、ここで引き返しているわけだから、根性がないんじゃないのか。何も予想せずにここまで来た立場だから言える。おそらく、秋山峠からワラビタキ方面に向かい、雪が深いからやめるか、といったところだろう。ということは、秋山峠からの下山道にはトレースがあるということだろう。菜畑山に行く云々はともかくも、ここで下山ルートは確保されているようだとほっとした。
(秋山峠)

トレースがあったところで、この水気のある雪では大助かりになるわけでもない。ただ、気分的には楽だ。トレースを見てから3分後には秋山峠に到着した。
「秋山峠」の標識はない。来た方向には「巖道峠方面」、先は「赤鞍ヶ岳方面」、そして左手の下山方向には「竹之本下山方面(道志村役場周辺)」とある。「ワラビタタキ」はない。「役場周辺」というのがアバウトすぎる。途中から適当に歩けということらしい。竹之本というのは、地図を見ると役場周辺の地名になっている。そちらを見ると、予想通りにトレースだらけでしっかりした雪道になっているが、結構、急そうだ。いずれにせよ、ここからは問題なく下れることはわかった。
(秋山峠からの富士山)

(赤鞍ヶ岳に向かう)

(赤鞍ヶ岳山頂)

ここからの富士山が第4スポット。目の前のススキと枝ヤブがどうにも邪魔だが、撮り方によっては良い添え物かもしれない。道志みちはもう隠れてしまっている。またここに戻って来る確率は高いが、ヤブに入り込んでは何度も写真に収めたりした。
赤鞍ヶ岳はすぐそこだ。雪もなければ5分もかかるまい。山頂に到着。標識があるだけの広い山頂だ。三角点峰ではないから標石を探すこともない。ここの標識は3方向。左に「菜畑山」、右は「棚の入山」、そして秋山峠方面はあくまでも「巖道峠」となっている。随分と律義だ。この「棚の入山」方面だが、倉岳山から高畑山を経由して下った際、雛鶴峠で南に向けた赤鞍ヶ岳の標識を見ていて、そんなことで赤鞍ヶ岳に興味を持ったということもあるのだが、そちらに下るルートだろう。
(菜畑山方面。やはりトレースなし。他人のことは言えない。この先は遠慮する)

山頂からの富士山は樹間通し。すっきりと見えなきゃ長居は無用。さてと、菜畑峠の方面のルートを覗きに行く。トレースはなかった。何だ、昨日あたりのハイカーはみんな赤鞍ヶ岳往復でおしまいか。秋山峠から富士山を眺めて終わりではだらしがねぇなと思いつつ、トレースがないんじゃと、秋山峠にそそくさと引き返す。菜畑山は改めての訪問になった。
(秋山峠に戻って改めてちょいパチリ。実際はこれくらいの大きさに見えている。つい富士山は引いて撮る癖がついている。広角でも持っていればいいが)

秋山峠でさっきと同じ繰り返し。しつこく同じような富士山ばかりを撮る。危なっかしく足跡のないところまで行っても、樹に登らない限り、目の前のススキやら枝が障害物になる。
もうかなり暑い。フリースを脱いでシャツ一枚になる。ここも腰かけるところもなく、立ったままでおにぎりを食べ、そろそろ下山することにする。富士山も都合4スポット。途中で下山しようかと思ったりしたことを考えれば、今日の富士山見物も、まぁ満足でしょう。
(トレースバッチリの下り。少し先までは安泰だった)

(こうなると始末が悪い。泥を拾わないわけがない)

予想はしていたが、いきなり、つらい下りになってしまった。この辺の雪はくるぶし程度で、さらに昨日あたりのハイカーが歩いている。そして、気温が高くなって、条件の悪い雪混じり状態での下りになった。なまじノートレースの方が良かったようだが、これしかないチェーンスパイクを外すには不安だ。
触りの部分はまだ良かった。トレースの下に地面は出ていない。チェーンスパイクが土を拾うこともなかったが、こちらは雪が少ないのか、次第に草付きの地面が出てきてそのうちに泥化してきた。こうなると、雪が接着剤の役目を果たして、靴の下はダンゴ状になってくる。高下駄になって何とも歩きづらく、樹に足を叩いては塊を落とす。斜面は急で、ところどころにロープもあって、ロープ頼りの方がむしろ安全だ。
(もう雪の心配は無用か)

(植林の中にはまだある)

こんな状態がしばらく続く。さっさとチェーンスパイクを外したいが、雪はまだ続いていて、今のところ泥だらけのチェーンスパイクに手をかけたくもない。
植林帯に入り込む。雪はくるぶしほどになった。もういいだろう。チェーンスパイクを外してほっとした。最初からそうすれば良かった。アイゼンだったら、ここまでの苦痛もなかったろう。
(入道山なのだが、加入道山と何か関係があるのか? 山名のイメージから石祠でもありそうだが何もなかった)

下り一辺倒が登りにかかる。979m標高点ピークのようだ。昭文社マップには、この山は「入道山」となっていて「巻き道」と記されている。巻き道は目に入らずにそのまま直登したが、何かがあるピークでもなく、ただの平凡なピーク。標識も山名板もない。
尾根筋をどんどん下って行く。もう雪はない。ここもまた標識のないコースだ。はっきりした道筋もあって、紛らわしいところはない。ここからも富士山は見えてはいるが、枝木ですっきりした姿を望むことはもはやできないか。それでも、登った時と同様に、つい撮ってしまう。
(町が見えてくる)

(道筋は明瞭)

(アップにすれば、撮れはするが)

(急な下りになった)

(標識が出てきてコンニチワか)

(林道)

植林の下部は急になっていて、道は先端部を巻いている。見下ろすと下れそうなのでそのまま下ったが、かえって手間と時間がかかってしまった。そして「赤鞍ヶ岳」への標識を見る。半端な位置にある。その下には鉄塔巡視路の標識。そして、真下に林道。林道の傍らにも赤鞍ヶ岳の標識があった。この辺は下から標識頼りに登ると紛らわしいところかもしれない。現に、地図の破線路に合わせて下るつもりでいたが、道筋通りの下りはならず、実線林道の西側に出てしまっていた。
(ここを下ってみたら)

(ヤブの先には堰堤があり)

(フェンスを開けて林道に出る)

未舗装林道で大きな石にようやく腰をゆったりと落ち着かせて座ることができた。おにぎりを食べて昼食。さて、ここから林道を東に破線路合流までと思ったが、上りになっているので、適当なところから町に出ようと、右に歩く。すぐに左を覗き込むと緩い谷状になっている。入り込む。ショートカットのつもりでいたが、倒木が多くて歩きづらく、堰堤越えもあった。フェンスを開けて林道に出たのはいいが、余計に時間がかかったようだ。
(地図には鳥居マークがある。あれが神社の屋根っぽい)

(若宮八幡)

(路地を下ると)

(道志村役場に出た)

よせばいいのに、神社のようなものが見えたのでまたショートカットをする。ここもまた簡単にはいかなかった。ヤブに遭遇して神社に出はしたが、最後は畑の中を歩いた。
この神社、若宮八幡というらしい。隣接して神楽殿。階段下には鳥居。ここは路地になっていて、すぐに国道に出たが、右の建物は道志村役場だった。この前にも利用可能な駐車場はある。ただ、ちょっと見た限り、赤鞍ヶ岳に向かう標識は見かけず、やはり秋山峠にあった「道志村役場周辺」という標識は適格な表記なのかもしれない。
(国道歩き)

(さも「道志みち」といった風情だが、見た石仏はこれだけ)

(駐車場に帰着。暑い)

国道を東に向かう。交通量は多い。陽気のせいか、バイクと自転車が目立つ。すぐに左手に小学校が見え、その隣の駐車場に到着。水源の森そのものは、もう閉鎖されているようだ。
せいぜい6時間ほどの歩きだったが、今日は長く感じた。雪のせいか、暑さのせいなのか少しぐったりした。車載の温度計は17℃になっている。身体が汗でベタベタして不快。風呂屋に寄りたいところだが、あいにく立ち寄り湯の趣味がないため替え下着は用意していない。帰路も長いし、そのまま帰ることにする。
帰り道、またあおられになったら嫌だなと思ったが、運よく先行車は制限速度で走っていて、後続車はいない。むしろ、細い道を走る自転車が目障りだがようやく周囲の景色を見ながら帰ることができた。
(本日の軌跡)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」