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Channel: たそがれオヤジのクタクタ山ある記
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松木奥の未踏尾根を2本ばかり…。

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◎2016年6月22日(水)

銅親水公園駐車場(5:10)……六号ダム(6:55)……松木川離脱(7:55)……1828m・県境尾根(10:45)……1736m(11:10)……松木川着地(12:30)……六号ダム(13:20)……駐車場(15:35)

 前のブログ記事で、松木奥は年に2回が限度と記しながら、年半ばにして、3回目かと思うといささかうんざりもする。先日の小足沢中尾根(瀑泉さん風に言うなら「中間尾根」)で一つのけじめとし、後は成り行きでのテント泊のつもりでいたのだが、瀑泉さん記事を拝見してから気が変わった。瀑泉さんが歩かれた尾根もさることながら、何とか沢の中間尾根というのもありか…。これなら、引き続きの3回目を早々に実行しないとなぁということになる。ちなみに、自分にとっての「松木奥」とは、松木川の六号堰堤を越えた上流部エリアを指している。違和感もあるだろうが、念のためご了承のほど。

 2週続きで、土日に仕事や用事が入り込み、山歩きするような余裕はなかった。それでいて、梅雨は最盛期に入っている。何もなしの今週末すら天気の保証はない。ここは、平日に休んで行くしかないだろう。もちろん、天気を読んでの水曜日休暇だ。
 ところで、この「何とか沢の中間尾根」だが、ネット記事で探してみると、この沢の右俣を経由して県境尾根に出、左俣を下るつもりが、予定変更でこの中間尾根を下ったという記事を見かけた。一昨年の11月。これが唯一のネット情報になるだろうか。これには、あっさりと「歩きやすい尾根」とだけ記されている。足尾のRRさんの瀑泉さん記事へのコメント「全体的に砂地。下りでは膝に優しい尾根。危険箇所なし」を加えると、なるほどなといった尾根の様子が浮かび上がってくる。
 今さらもったいぶっても仕方あるまい。瀑泉さん記事で明かされているのだから敢えて記すが、釡ノ沢中間尾根。これと瀑泉さんが歩かれた大ナラキ沢「右岸」尾根を今回は歩くことにする。左岸尾根は常連だが、右岸尾根は歩いたことがないというか、その存在すら気にも留めていなかった。

 ここのところ、中倉尾根は遠い存在になりつつある。確実にブナの木の影響だ。正直のところ、こんな木が足尾の山のシンボルとなり、PRされるのも困ったものだが、即興のハイカーが押し寄せ、井戸沢右岸尾根すら、団体さんが利用するほどの通常コースになってしまった。中倉山は、少なくとも土日には静かな歩きを楽しむ山ではなくなった。さらに最近は、松木川側の正面から中倉稜線を目指すアドベンチャラスなネット記事を目にするようにもなり、一時的に自分も試してみたものの、どうも好みの歩きからは程遠い。自分に見合った居場所はもはや松木奥かメインから外れた尾根しかないのかと、そちらにシフトするようにもなり、実は、松木奥とて、やがては…の心境なのである。自分の記す記事がその助長になるとは思えないが、山行記録にしても、あまり詳細なものにしたくはなく、さりとて、行って登って下って楽しかっただけの記事ではなぁ。難しいところでもあるし、複雑な心境でもあるのだ。最近の足尾の山好きは、若手をメインに、概してガツガツなんだよなぁと、また、わけの分からないぼやきの前置きが続いてしまった。

 GPV気象予報では、前夜まで終日曇りの予報であったが、出がけの3時に改めて見ると、10時過ぎから終日雨になっている。休暇をとった以上は今さら仕方がない。雨なら、相応に引き返すか、魔王山にチェンジするかだ。ただ、六号堰堤まで行ってからの引き返しではたまったものではないけど。

(うっすら青空の中に中倉山が見えている)


 銅親水公園の駐車場には車はなかった。平日だから当たり前か。準備をしていると、草刈りのオジサンがやって来た。いつも駐車場が混んでいて、草刈りができないんだよとぼやいていた。ようやく今日はできるって。
 今のところ、青空が覗き、中倉山も見えている。南岸尾根方面には濃い目の雲が漂っている。キジのキューゾーはどうしたのか、声はすれども姿は見えず。
 ここ数日の雨で、松木川の水量も少しは増えているかと思ったが、全然変わらない感じだ。来る途中の掲示板で見た草木ダムの貯水率は50%、これが帰りには48%にダウンしていた。神子内川の水も少ないのだろう。

(いつもならこの入口、陰で真っ黒けになるのだが、今日はすっきり)


(小足沢を覗いてみる)


(前回はこれにダマされた。道型だと思ってしまった)


 やはり明け方に雨が降ったのか、草葉にあたるとズボンが濡れる。歩き方と同様にだらだら記しても意味はないだろう。あっという間に飛んで、ウメコバ沢出合い。ここで菓子パンの朝食。天気も崩れないでいる。
 今日は、出発から沢靴で歩いている。これで通すつもりだ。履き替えはしない。念のために替えの靴下だけは持ってきたが、これとて濡れたままの靴には意味をなさない代物だ。

(本日の助っ人。心強い味方とばかりに思っていたが、早々に戦線離脱をされる)


 六号堰堤を越え、小足沢の入口滝を見て、いつもの場所に着いた。自分には大ナラキ沢左岸尾根のベース基地のような所だ。対岸の高みには吊り橋基礎の石垣が見えている。まずは沢靴の水をはき出し、靴下をしぼる。ここで秘密兵器を出す。アマゾンで購入したアメリカ製のスタビルアイサーなる滑り止めグッズ。2,832円也。チェーンスパイクを巻くつもりが、どこに隠れたか見あたらず、買い置きにしてあったこれを急遽持ってきた。今回が初使用となる。うまく沢靴にもフィットした。しかし、この便利げなグッズ、少なくとも今回の自分にはとんだ食わせ物だった。下山して、ここに辿り着いた時には、消え失せている。繰り返しだが、あくまでも「今回の自分には」だ。したがって、カスタマーレビューに「買って失敗した。役立たずだった。騙された」の書き込みはしない。いずれにせよ、この時点ではスタビルアイサーを締めて、気分もしゃきっとしている。一服つけて出発。

(では出発)


(大ナラキ沢左岸尾根)


(次第に雲が多くなってきた)


(右岸尾根末端付近)


 この辺はよく通るところだからと高をくくったのが甘かった。同じような小尾根と沢をいくつか越え、ようやく目的の尾根末端に辿り着いた。その間に、道型らしきものがあちこちにあったり、赤テープを1本と茶碗のかけらを見かけたりもしたし、左岸尾根に向かいそうにもなった。
 さて、ここで、根本的なミスに気づいた。今日の予定は釜ノ沢中間尾根を先行するつもりでいた。しかし、何を勘違いしたのか、大ナラキ沢右岸尾根末端部にコンパスを合わせて歩いていた。そして、ようやく到着し、あらためてコンパスをセットすべく、1314mにコンパスを合わせたところで、はて、中間尾根には標高点スポットがなかったはず。地図をよく見ると、右岸尾根を目指していたという次第で、今さら中間尾根まで行くには遠過ぎの地点まで来ていた。まぁ、いずれの順番でもいいだろうということにはしたが、実はこれが幸いし、予定通りに中間尾根を往路にしていたら、すぐ目の前に見えている県境尾根の前で撤退ということになっていたかもしれない。そのお楽しみは後でまた。

(尾根に乗って)


(1314m標高点)


 尾根型が明瞭になるにつれ、次第に急にもなり、ちょっとばかりくじかれた。ここ、左岸尾根よりもきついんじゃないのか。実際は、この辺に関しては左岸尾根の方が標高線も密になっている。雲行きが怪しくなれば、1314m標高点で撤退という手もあるなと期待はしたが、木々の間から陽射しが入り込んでいる。県境尾根に出てから雨では途方に暮れるわけですよ。降るならさっさと降ってもらいたいもの。
 歩行のじゃまにはならないが、倒木もあって、少しばかり荒れている。そして、人の臭いをまったく感じない尾根といった強い印象を受ける。瀑泉さんの足跡はすでに消えてはいるが、四つ足の新しい足跡を散見する。ただ、クマらしき足跡はない。右下の沢沿いはクマの巣窟らしい。ちなみにスズは3個、ジャラジャラと付けている。
 1314mに到着。特徴のない小ピーク。瀑泉さんの時とは違って周囲の展望はない。白っぽいだけ。皇海山も松木川からは見えたが、もう姿を隠した。ここから一旦下って尾根は続く。さらに急になったような気がする。ただ、緩斜面のだらだら登りと違って、急なところは高度が稼げるからまだ始末がいい。問題はどこまで続くのかといったところだが。先の尾根上に切れ目が見えてきた。あそこが1450mだろう。

(そして1450mとなる)


(瀑泉さんケルン。孤高、超然といった言葉が似合いそうだ。そういえば、小足沢中間尾根のケルンはチャレンジャー氏ではなくYoshiさんのだったようだ。何年かすれば崩れもする)


(左手前方。奥が1736mだろう)


(左岸尾根越しに大平山方面。ダメだこりゃ)


 1450mは、白砂地とはいっても、雨を含んで薄茶になっているが、ゆっくりできるスポットだ。瀑泉さんのケルンがあった。結構、頑丈な造りだ。ここもまた天気のせいで展望は悪く、かろうじて左岸尾根越しに大平山のシルエットが見え、目を反対に転じると、1736m峰(カマ五峰)から続く険悪そうな県境尾根の一角が見えている程度だ。もしかして、3つ目の岩峰らしきところから釜ノ沢中間尾根が始まっているのではあるまいな。あれを見るとたじろいでしまう。
 倒木に腰かけ、一服していてふと気づいた。靴にあてがったスタビルアイサーが両方ともに消えている。まったく気づかなかった。どういう弾みで外れたのだろう。それにしても、脱着の感覚がないというのはどういうことだ。あんだけビシリと締めたのに。さらに見事に2つ共に消えたのは何でだ? 何かにひっかけた記憶もない。1314mで休んだ時にはしっかりあった。今さら探しに下るとなると、そのまま下ることになりそうだ。このテープもない静寂な尾根にゴミを捨てたことにはなるが、いずれ、この尾根を改めて利用する時にでも回収しよう。これから先の歩きにしても、フェルトの沢靴ではないので、滑ることはあるまい。

(瀑泉さん、これも?)


(石がゴロゴロ)


(やがてこうなった)


(やがてその2)


(やがてその3。気持ちのいい歩き)


 ここもまた一旦下って登る。低いササが出てくる。石がゴロゴロしたところを通過。2枚重ねのケルンもどきが置かれていた。果たして瀑泉さんの2つ目?
 尾根の景色がきれいに広がってくる。ダケカンバの尾根だ。撮った写真を後で確認すると、瀑泉さんと同じところを撮っていた。右の左岸尾根との間隔が狭まってきている。合流までもう少しだ。
 なだらかに見えて実は急な尾根をさらに登ると、左手に1736m峰が間近に迫ってくる。ピークの頭にはガスがかかっている。天気は確実に下り坂。ここまで来て雨なら、左岸尾根を下るか、県境尾根に出て、国境平から釜ノ沢左俣右岸尾根(瀑泉さんによればそう呼ぶらしい)を使うしかない。雨の中の未踏尾根の下りは何があるか分かず危険だろう。

(1736mが近くなる)


(立てかけは瀑泉さん?)


(勝手にこうしてみましたけど)


(内側)


 大きな石が一つ、ごろーんと置かれたスポットに出た。ここも白砂地になっている。石の脇にはシカ角が立てかけてあった。こんなお行儀の良いことをシカはすまい。何せウマシカだ。大方、瀑泉さんの手によるものとは思うが、何か、自分の足跡を残す方法はないかと思っていた時だっただけに、ちょっとばかりケルン状の仕上げにしてみた。周囲に手ごろな石はなく、小石を集めて基礎にしたから、すぐに崩れることだろう。

(緑の岩峰が出てきた)


 さて、ここは1700m付近。そろそろこの尾根の終盤戦に入っている。先日、合流部近くで左岸尾根側からこちらを覗いて見たが、薄暗い岩峰が下に続いているように見えた。ちょうどその魔界のようなエリアに入ったようだ。気持ちを引き締めたいところだが、すでに結構疲れているし、周囲の空気が白っぽくなっていて、かなり気も急いている。瀑泉さんの晴天時のように、酔狂に岩に登り、天下見晴らしの絶景にアッパレをやっているわけにはいくまい。さっさと通過することしか頭にはない。

(巻きに徹して)


(左岸尾根に合流し)


(おなじみのエロ岩に出た。みー猫さん含め、立て続けにネットに登場してブームになるかも)


(そして県境尾根・両毛国境稜線に合流)


 すべてを巻き巻きで左岸尾根に合流し、エロ岩の裏に出た。助かったというのが率直なところだ。晴れていたらアッパレをやっただろうか、おそらくはやるまい。
 後ろ髪を引かれる思いもなく、そそくさと県境尾根に出た。ここで休憩。天気もまずはここまでは持ったか。ということは、この後、果たして釜ノ沢中間尾根を下れるかどうかだ。雨になったら、国境平まで下ることになるが、そうなると、やり残しになってしまい、また近いうちにやって来ないといけなくなる。足アテのゴミ回収が課題になってしまったが、これは先送りしてもいいだろう。どうせ、瀑泉さんやら自分のブログを覗きに来る方以外に歩く方がいるとは思えない。RRさんも近々お歩きになるようだし(その節は適当にご処分ください。笑)。となると、雨になっても中間尾根を下った方がいいかもしれない。あそこの取り付きの岩峰らしきところはどうにかなるだろう。何せ、危険箇所のない膝にやさしい尾根のはずだ。ところが、その尾根の特徴も、安定してからの話であることを後になってから知ることになる。
 ↑瀑泉さんからのコメントで知ったが、RRさんはすでに11日に大ナラキ沢右岸尾根を歩かれてしまったようだ。ゴミ回収はいずれ自分で改めて行かなきゃならないか。

(ササの間の踏み跡とブリキマークを追う)


(せっかくの景色もこれだもんね。盟主さんはとうにお姿を隠されている)


(振り返って。右端に洋ナシ岩)


 ササ深い県境尾根を下る。ガスが一面にかかり、せっかくの景色を眺めることができない。台無しながらも、梅雨時の歩きとしては、雨にもあたらずにここを歩けるだけでも幸いと思えか。プレートを拾いながらの歩きになってしまった。振り返ると、ガスの中に洋ナシ岩(別名 尖り岩)が見えている。きりんこさんのキジのキューゾーにせよ、この洋ナシ岩にせよ、最初の命名者のお立場を尊重すべきであり、第三者がとやかく言うことではないが、命名者が洋ナシと尖りで迷われているようでもあり、こちらは早いとこ一本化してもらいたいところだ。→瀑泉さんの二者択一は「洋ナシ岩」であった。

(1736m峰)


(1690m)


(左下に釜ノ沢中間尾根が落ち込む)


 1736m峰が正面に見えてきた。左の谷間からはガスがいやらしく湧いてきている。あの辺、視界0ではないだろうな。
 1736m峰を通過。引き続きの1690mピーク。左下にカクーンと落ち込んだ尾根が見えてくる。まさか、あれが釜ノ沢中間尾根ではあるまいな。地図を見ながら確認する。やはりあれだ。どう眺めても膝に優しくは見えてこない。ハイトスさんなら見ただけで悪化か。

(カモシカ平と日向山)


 下って鞍部の手前。そろそろ分岐になる。この先の県境尾根を右手に見やると、真下にカモシカ平、その先には1695m峰(日向山)。実は、このカモシカ平で南側にあるとかいう水場を確認するつもりでいたが、どうも空を見上げては気が重くなっていて、そんな水場探しの気持ちの余裕はまったくない。まぁ、今あったとしても、夏場にはなくなるだろうということにしておこう。

(釜ノ沢中間尾根の取り付き。右の岩はテラス状になっている。手前は崩壊地の切れ落ち。これ以外の写真の掲載はやめておく。気になる方は現地まで)


 さて、カモシカ平の上部ということになるか、この辺は広い白砂地斜面になっている。地図でコンパスをあてがうと、どうも目指す方向は崩壊地になっている。その崩壊地のちょい先には岩場のテラスがある。瀑泉さんが目撃されたカメラマン氏はあのテラスにいたのだろうか。しかし、崩壊地をどうやって渡ればあそこまで行けるのかいな。コンパスのセッティングにミスがあったのではと、あきらめきれずに何度も地図に合わせたが、矢印が示す尾根方向はどうしても崩壊地となってしまう。崩壊地の先の様子は木立でまったく見えない。果たしてその先が尾根状になっているのかもからきし分からない。行ってしまってからストーンではきつい冗談になる。
 周辺をうろついた。あわよくばと巻き道を探した。そんなものはなかった。地図の上ではゆるやかな標高線がぐるりと巡り、尾根先にトラバースできそうだが、垂直の現実ではトラバースのしようもない。
 あきらめて国境平まで行くかと思ったが、その前にちょいと様子見だけでもしておくか。
 上に木立があったので救われたが、その先は切れ落ち、どうしても右下の崩壊地のザレを通過しないとどうにもならない。つかめるものはなく、何とか渡って、先に出た。ちょっとズルッといけば、そのまま転落だ。通過に冷や汗をたっぷりかいた。テラスが目の前に見えた。たかが5~6m先だが、そことて蟻の門渡りだ。
 ここまで来て戻れと言われたら戻れない。つまり、この尾根を上り時に使用した場合、ここに至って撤退の覚悟も必要だろう。グループで来たら、ここでバラバラとなる。カメラマン氏も、自分の想像するに、下からここに来たのではあるまいか。

(岩に登って1690m)


(この先はこうなっていた)


(膝にやさしい尾根。ハイトスさんにはぴったりか)


(ガレ尾根になって)


(ケルンを積む)


 上の岩場に登った。左にはすぐそこに1690mピーク。そして、右手先には平和そうな尾根が下っていた。ほっとした。
 ササの低い、踏み跡の通った尾根だ。幅は少し狭い程度だが、左側は谷底に向かって急斜面になっている。傾斜は緩やか。1690mから見えたカクーンとはまったく違う。やがて、大小の石が入り込んだガレ場を通過。記念にケルンを積んでみたが、ガレ場のケルンだ。周囲の景色に同化して、気づかれることもあるまい。

(白砂地が続く)


(明瞭な踏み跡)


(ブリキマーク)


 ガレ場を過ぎると、幅広の尾根になった。すっきりした晴れ空なら、釡五峰の眺めが良いところかもしれない。古いテープやらブリキマークも見かけた。ただ、ブリキマークはそこの2枚だけで、それ以外は目に付かなかった。この尾根、自分が思うに、釡ノ沢左俣右岸尾根同様に、以前は人通りもあっただろうが、県境尾根との合流部で崩壊があって以来、好んで入る人もいなくなったということではないだろうか。ケモノ道とは思えぬ明瞭な道型すら残ってもいる。

(尾根が広がり、やがて沢が見えてくる)


(釜ノ沢の小滝)


(松木川が近づく)


 白砂地を通過。やがて、等高線の幅が狭くなるのに合わせ、幾分急になり、尾根もさらに広がって、沢にぶつかった。小川のような細い沢だが、これは釜ノ沢の左俣だろう。しばらくこの沢の左岸沿いを歩いた。ヤブめいたところもあるが、大きな障害はない。そして、以前、左俣右岸尾根を下った際に見かけたケルンを2つ久しぶりに見て、右俣に合流した。
 予定では、出発のベース基地で松木川に出るつもりでいたが、右下に早くも松木川が低く見え出し、道型もあったので、早々に松木川に無難に降りた。
 大休止。顔を洗って、どら焼きとチョコレートを食べる。釜ノ沢中間尾根、意外にあっさりと短時間で下れた。入口の難所を除けば、歩きやすい、膝にやさしい、危険箇所なしもまさにその通りの尾根だ。晴れていれば、途中からの釜五峰の眺めが良いことがプラスされるだろうか。だが、お薦めはしない。登って、県境尾根手前で引き返すのならお薦めだ。一部の方を除いての話だ。
 今回は素手のままに崩壊地を横切ったが、まっとうな感覚を持っていれば、自己確保をすべきだったろう。いつものことだが、ザックの中のロープの存在は忘れていた。使い慣れていない道具だから、どうしても思い出せずのままになってしまう。まったくの初心者の感覚だ。

(出どころは大ナラキ沢だろう。前に見た時はほとばしっていたが。右の水流も弱い)


 今日は水を2リットル持参で来ていたが、ここまで実際に飲んだのはコップ2杯分程度のもので、水筒の水を1キロ分軽くして出発。大ナラキ沢から注ぐ滝を見て帰途につく。
 ベース基地を通過。今日は雨にもあたらずにラッキーだったなぁ、だったら、カモシカ平の水場探しも本気でできたかもなぁなんて思っていたら弱い霧雨になっていた。帽子をかぶっていたので気づかなかった。このままの格好でもたいして濡れやしまい。六号ダムを渡って、ウメコバ沢出合。タバコを吹かして靴下しぼり。また親指が攣った。

(雲が低くなっている)


 丹兵治沢出合いを過ぎるとポツリ。ようやく本降りになるかもと、樹の下に入って、合羽の上を着て、ザックカバーをかけた。いずれも何年かぶりの使用だろうか。以前、オロ山で着た記憶だけはある。晴天時でも欠かさずに持参はするが、利用することはまずない。久しぶりに着たと思えばうきうきとした気分にもなるが、蒸して暑くなり、さらに雨はすぐに上がってしまい、結局は、みちくさで休憩した際に脱いでしまった。
 話は前後するが、林道ゲート手前で、大きなカメラを上に向けて固定したオニイチャンに会った。唯一の、山中で出会った方だ。鳥の撮影ということだったが、ゲートに置かれた車は茨城県ナンバーで、林道通過の許可もいい加減なものなんだなと再認識した。釣りに来て、生態調査を目的にするのとは違うだろうが。

(この辺は雨上がりのようだ。手前には水溜りもあちこちにあった)


(中倉山はもう見えない)


(今日も無事に帰還できた)


 キューゾーの声が上流寄りで聞こえた。駐車場に着くと、車が数台あった。今日あたりのハイカーは自分くらいのものだろう。周囲の草はきれいに刈られていたが、後処理が雑で、コンクリのベンチに腰をかけると、尻が刈った草まみれになってしまった。

 県境尾根と松木川を結ぶいくつかの尾根、これでモミジ尾根を含めて6本ほど歩いたが、肝心な尾根が一つ残ったままでいる。盟主さまの東尾根。錚々たる方々が登っていらっしゃる。立場的にはただの後追いに過ぎないから気は楽だ。これとて、派生尾根を加えれば2~3通りにはなるだろうが、取りあえずのメイン尾根は紅葉の時までには片づけたいものだと夢想する。どうせ、計画を立てながらも、直前になれば何やかやと理由をつけてヤメにしてしまうのがオチだろうなと想像もつくところだが。

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