◎2017年6月17日(土)
銅親水公園駐車場(6:46)……中倉山登山口通過(7:32)……スリットダム前(7:51)……仁田元沢入渓(8:14)……沢離脱(8:40)……大岩(8:58)……1255m標高点(9:42~9:58)……中倉山尾根合流(10:53~11:12)……中倉山通過(11:17)……林道合流(12:37)……駐車場(13:13)
仁田本沢から尾根伝いに沢入山に直登したことはあるが、その手前(下流)側から中倉山の稜線に出たことはない。スリットダム手前から断崖が続き、沢に入ると直瀑が落ち込み、こんな険悪な左岸側の風景からして、これでは禁断のエリアだろうなと思い、こちらからの中倉山尾根への上がりは一顧だにしたことはなかった。
ところが、ふみふみぃさんが昨年の3月に、中倉山先の鞍部から南に尾根を下り、件の直瀑脇に出られていた。かなり無謀というか暴挙にも似た感じがしないでもなかったが、改めて地図を見ると、直瀑はともかくとして、その先からなら何とか登れるのではないか。しかし、それほどの危うい所を登ってまでといった気分の方が強く、やはり自分には縁のないエリアだと結論づけたつもりでいた。
それでいて、昨年の5月に塔の峰のドンピシャ尾根(北尾根)を登った際、仁田元沢を遡行しながら、どうも気になって左岸側を眺めながら歩いたりしている。岩場が切れても急斜面だ。しつこくも、ドンピシャ尾根を登りながら、下の仁田元沢が見えるわけでもないのに対岸の様子をじっくり窺いもした。
今年の一月、発作的にもう一度確認に出向いた。果たして本当に行けないのか、けじめだけでもつけておかないと。結局、雪もあって、それこそ無謀な話となり、スリットダムまでも行けずに撤退し、どうでもいいこじつけルートで中倉山に登って終わった次第。
そろそろ改めてやってみるか。どうも気になってしかたがない。適当な取り付きの場所を見つけられなかったら、そのまま沢通し歩きにして瀑泉さんの後追いに切り替えればいい。とにかく、地図上の等高線の並びと、記憶の風景を頼りに地図にポイント候補をいくつかチェックする。これでダメならもうこだわるまい。
親水公園の駐車場にはざっと20台以上の車があった。大方がすでに出払っている。この時間だから観光客のものではあるまい。足尾の山も混みだしたものだ。大間々からずっと前を走っていた車も銀山平の方に左折した。庚申山方面も今日は賑わっているだろう。滝沢あたりに入る物好きはいるまいが。
準備をしていると、単独のオッチャンが道水管橋の方に向かってすぐに戻って来た。久しぶりに来たのだろう。しかしこの橋も、以前はだれも渡っていなかったのに、ネットに情報が出た途端に渡るのが当たり前のようになっていた。自分もその一人だが、慣れてしまうと、迂回するのも面倒になるのが本音のところ。
(キューゾー)
![]()
(いったい何をしようとしているのか)
![]()
久しぶりにキューゾーの鳴き声が聞こえる。河原でカメラマン氏がそれを撮っている。違う方向からも鳴き声が聞こえる。少なくとも二羽はいるようだ。
足尾の山も小さな花でカラフルになっている。黄色、白、いつもの紫の小袋状の花がそこいらじゅうに咲いている。林道伝いにずっと続き、見上げると、横場山の斜面もまた賑やかになっている。
(中倉山の登山口マーク)
![]()
(奥へ)
![]()
(一か八か沢に架かる橋)
![]()
中倉山の登山口を通過。真新しい黄赤の丸いマークが樹に打ちつけられている。今やポピュラーな中倉山だ。せめて<中倉山登山口>程度の道標があっても良いような気がする。あとは、道型もしっかりているし、余計なテープとマークは不要だと思うけど。
その先、色づきのものは消えた。さっきまで賑やかだった小花も見えなくなった。もう緑一色だ。仁田元川橋を渡って振り返る。1月に苦し紛れに登ったルート、今はもう緑がかぶって地形がよくわからない。その左手の尾根型もはっきりせず、ガレ場も隠されてしまっている。ここで「仁田元川橋」ついでだが、通称「一か八か沢」の名前にしている沢の名前も正式にあるのではないかと、その大方は橋の欄干に記されているものだから、気になって見たが、沢に架かる橋には名前も建設日も記されていなかった。やはり一か八か沢のままか。
(スリットダム)
![]()
(出どころ不明のロープだが、あの枝引っかけが頼りない)
![]()
スリットダムに着く。いつものように左岸側から巻く。水は少ないようで、渡渉時に地下タビを濡らすことはなかった。
今日、初めて気づいたことだが、巻きの途中、長いロープというか細引きのようなものがダムに直接下りていた。これは釣り人が設置したものか知らないが、さらに巻きをするよりは良い。引っ張ってみた。途中で枝に結わえていて何とも心もとない。これで高さ2m以上をコンクリに足を踏ん張って下るのでは危うい。結局、いつものようにゴロゴロ区間を先に行って沢に下りた。
(入渓する)
![]()
(水少ないなぁ)
![]()
(これはお気に入り)
![]()
河原で菓子パンを食べ、一服。沢靴に履き替え、ヘルメットをかぶる。そして出発。
やはり水が少ない。わざわざ沢靴に履き替えるまでもなく、しばらくは飛び石で行けたかなと思ったりした。先に釣り人がいるのかどうか、これでは石に水の足跡も残りはしない。まぁせっかくだからと、わざわざ水に入って遡上する。適温で、温くも冷たくもない。
(直瀑が右手に見えてくる。真っ直ぐ先が最初のポイントだった)
![]()
(直瀑の水はタラリ)
![]()
ほどなく右奥に直瀑が見えてくる。いつもならほとばしる水も、今日は岩壁伝いに垂れている。難なく、直瀑手前の小滝に出た。見上げる。ふみふみぃさんは、よくもこんなところに下って来たものだ。ましてノーロープで。やはり無謀としか思えんわ。ここはいつもなら右側を通って直瀑の水をかぶるパターンだが、瀑泉さんの情報どおり、適当な足場はなく腰までつかりそうだ。別に、通しの沢歩きで来ているわけでもないので、左の小滝を越えることにする。
水量は少ないながらも、這い上がるのにヒザを使ったため、結局は腰まで水をかぶってしまった。以前、ここを通った時はロープを伝った記憶があるが目に付かなかった。このままでいけば、次のハイトスさん斜瀑は左側をロープを伝って上へとなるが、今日は直瀑左の溝状のザレ地に用事もあるので、直瀑下に移動する。
溝地の上を覗く。最初の取り付きポイントだった。湿っぽくて薄暗い。やはりチョロ水が流れていてズルズルいきそうだ。ここはダメだな。
(ハイトスさん行かないの~滝。ここは滑った)
![]()
ハイトスさん斜瀑を左岸側から巻こうとしたが、沢靴に泥が付いていたため、危うく滑り落ちそうになり、必死にこらえて越える。
<中略。この先、取り付き部の詳細な記載は省略>
(ここを取り付きにしてみる)
![]()
やがて水量のある滝が出てくる。ここは一丁、濡れたついでに勢いづけで左から水をかぶって越えようかと思ったが、右手に巻き道があるようで、ふと見上げると、ここから上に出られやしないか。急斜面だが、そう長くは続くまい。次のポイントはもう少し先にあったが、ここから登ってみることにしよう。沢遊びはあっけなく終わり、ここで仁田元沢から離脱する。
(見下ろす)
![]()
巻き道はまた沢に戻るがそのまま上に登る。大きな石がゴロゴロした急斜面だ。湿気を帯びたグズグズ斜面。安定していない。ヘルメットがうっとうしくなってくる。ちょっと平らになっている所で脱ぐ。靴も履き替えようかと思ったが、そんなスペースはなく、ましてまだ安全圏でもない。沢に戻ることにもなりかねない。
(巨岩帯が現れる)
![]()
しばらくは樹を伝って登った。間隔のあるところは飛び移った。尾根型はまだ出てこない。見下ろすと当たり前の急斜面。そのうちに前方に大きな岩盤が見えてきた。立ち塞ぐ格好で鎮座しているが、右から巻けそうだ。その右は谷状になっているようだが、落ち込んではいないから、転落の危険はあるまい。
大岩の下の平らなところで休み、地図を広げる。この辺にコブ状の崖マークが垂れ下がっているが、これか。ここを右にすり抜ければ尾根型が現れてきそうだ。
(右を巻きながら見下ろす)
![]()
(上に尾根型のようなものが見えてくる。あれに乗るとしよう)
![]()
大岩の右を登る。相変わらず立木頼りの登り。四つん這いの余裕はない。大岩を抜け、1160m付近になると傾斜が幾分緩やかになり、右下から踏み跡が出てくる。これはシカ道だろうが、今度はこれを頼りに登る。GPSを見ると、すでに尾根型になっているはずなのだが依然として不明瞭。
間もなく、左手に尾根型が張り出してきた。どうも大岩の上から続く尾根のようだ。ともあれ尾根に乗り移る。傾斜も幾分落ち着いた。
(登って行くと、こんなところに出た)
![]()
(仁田元沢奥)
![]()
(こんなのがあった)
![]()
これまた石混じりの尾根を登って行くと、少しばかり開けた所に出た。西側の展望が効き、仁田元沢を挟んで、塔の峰、オロ山の一角が見えている。ここで休憩。と、あろうことかケルンが積まれていた。こんなところを歩くのは足尾のRRさんかふみふみぃさんしかいないが、ふみふみぃさんはここを通過していないはずだ。やはりRRさんか。ふみふみぃさん記事のコメントに、この辺にいくつかケルンを置かれたことが記されていたなぁ。そういえば作業道がありげなことを記されていたが、さっきのシカ道が作業道? ではないだろうな。
(明瞭な尾根になった)
![]()
(確かにこんなところもある)
![]()
(微妙な二俣。上から)
![]()
尾根に乗ったらしめたもの。足尾の山域にありがちな普通の尾根だ。ただ、ふみふみぃさんの記録では、この尾根、ガレが続いているような気配があった。用心するに越したことはあるまい。まだ安心しきっていないので沢靴のままで先に行く。
途中で石だまりのようなところを通過。歩行に支障はない。むしろ歩きやすい。それを抜け、振り返ると、尾根は微妙な二俣になっている。地図ではわからない小尾根。1230mあたりだ。ふみふみぃさんはここを左に下ったのか。
(1255m標高点付近)
![]()
(標高板を取り付ける)
![]()
(中倉山の稜線)
![]()
1255m標高点が見えてくる。斜面にあるただの通過点かと思ったが、ちょっとした小ピークになっていて、その先は若干の下りになり、引き続きの登り上げになっている。この時期だからかさほどの展望はない。正面に中倉山尾根が壁になって見えるだけ。
では、先週に引き続き、作業開始といたしましょう。標高板の設置。塔の峰の改訂山名板を作った際、自分の目標がてら、小法師岳の山名板と1255mの標高板もついでに作った。これで手持ちはなくなった。ここに標識を置いたとて、自分がまた来るとはどうも思えない。山中のゴミのような気もするが、残置のテープよりはマシだろう。何人かの目に触れるかもしれないし。その時は、いっしょにうるさいほどの真新しいピンクテープも加わっているかもしれないなぁ。沢渡渉もあるから、それはあり得ないか。
それにしても、後で改めてふみふみぃさんのブログを見ると、1255m周辺の景色がどうも違う。3月と6月の新緑期ではこうも違うものなのだろうか。だとすれば、この辺歩きの適期は冬枯れ時だろう。いずれにしても、この先の下りで、ふみふみぃさんは左へ左へと行き、最後は直瀑の上という展開になるわけだ。やはり、こういう未知尾根はまず登りで歩いてみるのが自分には無難。ふみふみぃさんルートを信じて逆から登っていたら、今頃どこかの岩場で春ゼミになっている。
休憩もし、菓子パンも食べたところで北に向かう。この先、地図通りなら紛らわしいところはないはずの一本尾根だ。
(1255mを振り返る)
![]()
(タコ足)
![]()
(ケルンを積む)
![]()
前方が見えないのが何とも残念だが、尾根型は明瞭で、左右ともになだらか。気分の良い尾根歩きだ。たまに岩が出てきたりもするが、進行の妨げになるものでもない。RRさんにならって、こじんまりしたケルンを積んでみたりする。
(尾根が広がる)
![]()
次第に尾根が広がり、クマの痕跡が目に付くようになる。引っ掻きもさることながら、クマ糞も結構目につく。ただ湯気が出ているようなものはない。念のためスズをもう一個追加。中倉山尾根がブナの木のおかげで騒がしく、クマが尾根伝いにこの辺に下りて来ていても不思議ではない。
(オロ山。盟主様は見えない)
![]()
樹林の中が明るくなってきた。依然として周囲緑の中を歩いているが、たまに左側が開け、沢入山とオロ山を覗き見できるようになる。ただ、長くは続かず、すぐに視界は閉ざされる。冬なら丸見えだろうに。
(いい感じになって)
![]()
(沢入山方面)
![]()
(塔の峰)
![]()
(静かに語りかけるような岩。哲学的な岩だ)
![]()
(備前楯山方面)
![]()
(稜線が近い)
![]()
(まとめて)
![]()
(尾根の名残りを惜しんで休憩)
![]()
一面のササ斜面、かなりなだらかになってきた。大きな岩も点在する。今度は左手だけではなく右手に備前楯も見えるようになった。もっともまだチラ見だ。
右手前方のすき間に中倉山から続く稜線が見えてくる。合流か。さっさと出てもいいが、そこはもはやハイカーが行き交う街道だ。もうちょっと静寂に浸りたく、ちょうど左手が開けたところでもあったので、腰を下ろして休憩する。
(合流)
![]()
(ちょっと登るとこの位置に)
![]()
目の前を中倉山ショートカットの踏み跡が横切り、高台に登ると稜線に出た。すぐそこに例のブナの木がある。噂で知ってはいたが、ロープで囲われている。名もないブナの木を足尾の山のシンボルとして売り出し、ハイカーがわんさと押しかけると、今度は保護を理由に通せんぼか。まぁ勝手なものだ。だったら最初から静かにさせておけばいい。これまで気にもしないで脇を通っていた足尾歴の長いハイカーですら好奇の目を向けるようになる。
石に腰かけてしばらく休む。ここでようやく沢靴から地下タビに履き替えた。オッチャンが沢入山方向から下って来た。あのオッチャン、出がけに導水管橋の方に行きかけて戻って来た方じゃないか。沢入山まで行って来たそうだ。
晴れてはいるが、展望は今少しだ。男体山も皇海山も隠れている。これから悪くなるのだろうか。
さて、これからどう下ろうか。下りのルートは井戸沢右岸尾根と一般道以外に選びようがないが、ここのところ一般道選びが続いているし、仕方ない。あまり好きではない井戸沢右岸尾根下りにするか。
(中倉山)
![]()
その前にちょっと中倉山でお昼にしようかと思ったが、さっきのオッチャンがどかっと山頂に腰を下ろしていたので、お先にと声をかけて素通り。内心舌打ち。すぐにご老体2人連れが上がって来た。山中で出会ったのはわずか3人。今日は中倉山も静かだったのだろうか。
(しばらく続く。男体山見えず)
![]()
(石塔)
![]()
(井戸沢右岸尾根下り)
![]()
(黄色の小さな花が一面に)
![]()
井戸沢右岸尾根は最近、利用するハイカーが増えたせいか、やはり濃い踏み跡が目立つようになっている。ただ、ヤブの周辺ではあちこちを歩くのか、一時的に踏み跡は消えては復活する。石塔の上のケルン、RRさんがどうも石を継ぎ足したようだな。
(林道に出る)
![]()
(林道歩き)
![]()
(駐車場)
![]()
林道に出る。井戸沢で顔を洗い、ようやくここで遅い昼食をとった。
キューゾーとその他一羽の鳴き声を聞いて駐車場着。駐車場は満杯だ。バスも2台。バスは小学校の名前の札が置かれていたから、ここの公園だろう。他に観光客も目立つ。名古屋ナンバーの車がないか探したが、その頃、名古屋ナンバーは銀山平だったようだ。それにしても、この中に瀑泉さんのお車があるとは知りもしなかった。かつてのミラ号だったらすぐにもわかったろうが。
銅親水公園駐車場(6:46)……中倉山登山口通過(7:32)……スリットダム前(7:51)……仁田元沢入渓(8:14)……沢離脱(8:40)……大岩(8:58)……1255m標高点(9:42~9:58)……中倉山尾根合流(10:53~11:12)……中倉山通過(11:17)……林道合流(12:37)……駐車場(13:13)
仁田本沢から尾根伝いに沢入山に直登したことはあるが、その手前(下流)側から中倉山の稜線に出たことはない。スリットダム手前から断崖が続き、沢に入ると直瀑が落ち込み、こんな険悪な左岸側の風景からして、これでは禁断のエリアだろうなと思い、こちらからの中倉山尾根への上がりは一顧だにしたことはなかった。
ところが、ふみふみぃさんが昨年の3月に、中倉山先の鞍部から南に尾根を下り、件の直瀑脇に出られていた。かなり無謀というか暴挙にも似た感じがしないでもなかったが、改めて地図を見ると、直瀑はともかくとして、その先からなら何とか登れるのではないか。しかし、それほどの危うい所を登ってまでといった気分の方が強く、やはり自分には縁のないエリアだと結論づけたつもりでいた。
それでいて、昨年の5月に塔の峰のドンピシャ尾根(北尾根)を登った際、仁田元沢を遡行しながら、どうも気になって左岸側を眺めながら歩いたりしている。岩場が切れても急斜面だ。しつこくも、ドンピシャ尾根を登りながら、下の仁田元沢が見えるわけでもないのに対岸の様子をじっくり窺いもした。
今年の一月、発作的にもう一度確認に出向いた。果たして本当に行けないのか、けじめだけでもつけておかないと。結局、雪もあって、それこそ無謀な話となり、スリットダムまでも行けずに撤退し、どうでもいいこじつけルートで中倉山に登って終わった次第。
そろそろ改めてやってみるか。どうも気になってしかたがない。適当な取り付きの場所を見つけられなかったら、そのまま沢通し歩きにして瀑泉さんの後追いに切り替えればいい。とにかく、地図上の等高線の並びと、記憶の風景を頼りに地図にポイント候補をいくつかチェックする。これでダメならもうこだわるまい。
親水公園の駐車場にはざっと20台以上の車があった。大方がすでに出払っている。この時間だから観光客のものではあるまい。足尾の山も混みだしたものだ。大間々からずっと前を走っていた車も銀山平の方に左折した。庚申山方面も今日は賑わっているだろう。滝沢あたりに入る物好きはいるまいが。
準備をしていると、単独のオッチャンが道水管橋の方に向かってすぐに戻って来た。久しぶりに来たのだろう。しかしこの橋も、以前はだれも渡っていなかったのに、ネットに情報が出た途端に渡るのが当たり前のようになっていた。自分もその一人だが、慣れてしまうと、迂回するのも面倒になるのが本音のところ。
(キューゾー)

(いったい何をしようとしているのか)

久しぶりにキューゾーの鳴き声が聞こえる。河原でカメラマン氏がそれを撮っている。違う方向からも鳴き声が聞こえる。少なくとも二羽はいるようだ。
足尾の山も小さな花でカラフルになっている。黄色、白、いつもの紫の小袋状の花がそこいらじゅうに咲いている。林道伝いにずっと続き、見上げると、横場山の斜面もまた賑やかになっている。
(中倉山の登山口マーク)

(奥へ)

(一か八か沢に架かる橋)

中倉山の登山口を通過。真新しい黄赤の丸いマークが樹に打ちつけられている。今やポピュラーな中倉山だ。せめて<中倉山登山口>程度の道標があっても良いような気がする。あとは、道型もしっかりているし、余計なテープとマークは不要だと思うけど。
その先、色づきのものは消えた。さっきまで賑やかだった小花も見えなくなった。もう緑一色だ。仁田元川橋を渡って振り返る。1月に苦し紛れに登ったルート、今はもう緑がかぶって地形がよくわからない。その左手の尾根型もはっきりせず、ガレ場も隠されてしまっている。ここで「仁田元川橋」ついでだが、通称「一か八か沢」の名前にしている沢の名前も正式にあるのではないかと、その大方は橋の欄干に記されているものだから、気になって見たが、沢に架かる橋には名前も建設日も記されていなかった。やはり一か八か沢のままか。
(スリットダム)

(出どころ不明のロープだが、あの枝引っかけが頼りない)

スリットダムに着く。いつものように左岸側から巻く。水は少ないようで、渡渉時に地下タビを濡らすことはなかった。
今日、初めて気づいたことだが、巻きの途中、長いロープというか細引きのようなものがダムに直接下りていた。これは釣り人が設置したものか知らないが、さらに巻きをするよりは良い。引っ張ってみた。途中で枝に結わえていて何とも心もとない。これで高さ2m以上をコンクリに足を踏ん張って下るのでは危うい。結局、いつものようにゴロゴロ区間を先に行って沢に下りた。
(入渓する)

(水少ないなぁ)

(これはお気に入り)

河原で菓子パンを食べ、一服。沢靴に履き替え、ヘルメットをかぶる。そして出発。
やはり水が少ない。わざわざ沢靴に履き替えるまでもなく、しばらくは飛び石で行けたかなと思ったりした。先に釣り人がいるのかどうか、これでは石に水の足跡も残りはしない。まぁせっかくだからと、わざわざ水に入って遡上する。適温で、温くも冷たくもない。
(直瀑が右手に見えてくる。真っ直ぐ先が最初のポイントだった)

(直瀑の水はタラリ)

ほどなく右奥に直瀑が見えてくる。いつもならほとばしる水も、今日は岩壁伝いに垂れている。難なく、直瀑手前の小滝に出た。見上げる。ふみふみぃさんは、よくもこんなところに下って来たものだ。ましてノーロープで。やはり無謀としか思えんわ。ここはいつもなら右側を通って直瀑の水をかぶるパターンだが、瀑泉さんの情報どおり、適当な足場はなく腰までつかりそうだ。別に、通しの沢歩きで来ているわけでもないので、左の小滝を越えることにする。
水量は少ないながらも、這い上がるのにヒザを使ったため、結局は腰まで水をかぶってしまった。以前、ここを通った時はロープを伝った記憶があるが目に付かなかった。このままでいけば、次のハイトスさん斜瀑は左側をロープを伝って上へとなるが、今日は直瀑左の溝状のザレ地に用事もあるので、直瀑下に移動する。
溝地の上を覗く。最初の取り付きポイントだった。湿っぽくて薄暗い。やはりチョロ水が流れていてズルズルいきそうだ。ここはダメだな。
(ハイトスさん行かないの~滝。ここは滑った)

ハイトスさん斜瀑を左岸側から巻こうとしたが、沢靴に泥が付いていたため、危うく滑り落ちそうになり、必死にこらえて越える。
<中略。この先、取り付き部の詳細な記載は省略>
(ここを取り付きにしてみる)

やがて水量のある滝が出てくる。ここは一丁、濡れたついでに勢いづけで左から水をかぶって越えようかと思ったが、右手に巻き道があるようで、ふと見上げると、ここから上に出られやしないか。急斜面だが、そう長くは続くまい。次のポイントはもう少し先にあったが、ここから登ってみることにしよう。沢遊びはあっけなく終わり、ここで仁田元沢から離脱する。
(見下ろす)

巻き道はまた沢に戻るがそのまま上に登る。大きな石がゴロゴロした急斜面だ。湿気を帯びたグズグズ斜面。安定していない。ヘルメットがうっとうしくなってくる。ちょっと平らになっている所で脱ぐ。靴も履き替えようかと思ったが、そんなスペースはなく、ましてまだ安全圏でもない。沢に戻ることにもなりかねない。
(巨岩帯が現れる)

しばらくは樹を伝って登った。間隔のあるところは飛び移った。尾根型はまだ出てこない。見下ろすと当たり前の急斜面。そのうちに前方に大きな岩盤が見えてきた。立ち塞ぐ格好で鎮座しているが、右から巻けそうだ。その右は谷状になっているようだが、落ち込んではいないから、転落の危険はあるまい。
大岩の下の平らなところで休み、地図を広げる。この辺にコブ状の崖マークが垂れ下がっているが、これか。ここを右にすり抜ければ尾根型が現れてきそうだ。
(右を巻きながら見下ろす)

(上に尾根型のようなものが見えてくる。あれに乗るとしよう)

大岩の右を登る。相変わらず立木頼りの登り。四つん這いの余裕はない。大岩を抜け、1160m付近になると傾斜が幾分緩やかになり、右下から踏み跡が出てくる。これはシカ道だろうが、今度はこれを頼りに登る。GPSを見ると、すでに尾根型になっているはずなのだが依然として不明瞭。
間もなく、左手に尾根型が張り出してきた。どうも大岩の上から続く尾根のようだ。ともあれ尾根に乗り移る。傾斜も幾分落ち着いた。
(登って行くと、こんなところに出た)

(仁田元沢奥)

(こんなのがあった)

これまた石混じりの尾根を登って行くと、少しばかり開けた所に出た。西側の展望が効き、仁田元沢を挟んで、塔の峰、オロ山の一角が見えている。ここで休憩。と、あろうことかケルンが積まれていた。こんなところを歩くのは足尾のRRさんかふみふみぃさんしかいないが、ふみふみぃさんはここを通過していないはずだ。やはりRRさんか。ふみふみぃさん記事のコメントに、この辺にいくつかケルンを置かれたことが記されていたなぁ。そういえば作業道がありげなことを記されていたが、さっきのシカ道が作業道? ではないだろうな。
(明瞭な尾根になった)

(確かにこんなところもある)

(微妙な二俣。上から)

尾根に乗ったらしめたもの。足尾の山域にありがちな普通の尾根だ。ただ、ふみふみぃさんの記録では、この尾根、ガレが続いているような気配があった。用心するに越したことはあるまい。まだ安心しきっていないので沢靴のままで先に行く。
途中で石だまりのようなところを通過。歩行に支障はない。むしろ歩きやすい。それを抜け、振り返ると、尾根は微妙な二俣になっている。地図ではわからない小尾根。1230mあたりだ。ふみふみぃさんはここを左に下ったのか。
(1255m標高点付近)

(標高板を取り付ける)

(中倉山の稜線)

1255m標高点が見えてくる。斜面にあるただの通過点かと思ったが、ちょっとした小ピークになっていて、その先は若干の下りになり、引き続きの登り上げになっている。この時期だからかさほどの展望はない。正面に中倉山尾根が壁になって見えるだけ。
では、先週に引き続き、作業開始といたしましょう。標高板の設置。塔の峰の改訂山名板を作った際、自分の目標がてら、小法師岳の山名板と1255mの標高板もついでに作った。これで手持ちはなくなった。ここに標識を置いたとて、自分がまた来るとはどうも思えない。山中のゴミのような気もするが、残置のテープよりはマシだろう。何人かの目に触れるかもしれないし。その時は、いっしょにうるさいほどの真新しいピンクテープも加わっているかもしれないなぁ。沢渡渉もあるから、それはあり得ないか。
それにしても、後で改めてふみふみぃさんのブログを見ると、1255m周辺の景色がどうも違う。3月と6月の新緑期ではこうも違うものなのだろうか。だとすれば、この辺歩きの適期は冬枯れ時だろう。いずれにしても、この先の下りで、ふみふみぃさんは左へ左へと行き、最後は直瀑の上という展開になるわけだ。やはり、こういう未知尾根はまず登りで歩いてみるのが自分には無難。ふみふみぃさんルートを信じて逆から登っていたら、今頃どこかの岩場で春ゼミになっている。
休憩もし、菓子パンも食べたところで北に向かう。この先、地図通りなら紛らわしいところはないはずの一本尾根だ。
(1255mを振り返る)

(タコ足)

(ケルンを積む)

前方が見えないのが何とも残念だが、尾根型は明瞭で、左右ともになだらか。気分の良い尾根歩きだ。たまに岩が出てきたりもするが、進行の妨げになるものでもない。RRさんにならって、こじんまりしたケルンを積んでみたりする。
(尾根が広がる)

次第に尾根が広がり、クマの痕跡が目に付くようになる。引っ掻きもさることながら、クマ糞も結構目につく。ただ湯気が出ているようなものはない。念のためスズをもう一個追加。中倉山尾根がブナの木のおかげで騒がしく、クマが尾根伝いにこの辺に下りて来ていても不思議ではない。
(オロ山。盟主様は見えない)

樹林の中が明るくなってきた。依然として周囲緑の中を歩いているが、たまに左側が開け、沢入山とオロ山を覗き見できるようになる。ただ、長くは続かず、すぐに視界は閉ざされる。冬なら丸見えだろうに。
(いい感じになって)

(沢入山方面)

(塔の峰)

(静かに語りかけるような岩。哲学的な岩だ)

(備前楯山方面)

(稜線が近い)

(まとめて)

(尾根の名残りを惜しんで休憩)

一面のササ斜面、かなりなだらかになってきた。大きな岩も点在する。今度は左手だけではなく右手に備前楯も見えるようになった。もっともまだチラ見だ。
右手前方のすき間に中倉山から続く稜線が見えてくる。合流か。さっさと出てもいいが、そこはもはやハイカーが行き交う街道だ。もうちょっと静寂に浸りたく、ちょうど左手が開けたところでもあったので、腰を下ろして休憩する。
(合流)

(ちょっと登るとこの位置に)

目の前を中倉山ショートカットの踏み跡が横切り、高台に登ると稜線に出た。すぐそこに例のブナの木がある。噂で知ってはいたが、ロープで囲われている。名もないブナの木を足尾の山のシンボルとして売り出し、ハイカーがわんさと押しかけると、今度は保護を理由に通せんぼか。まぁ勝手なものだ。だったら最初から静かにさせておけばいい。これまで気にもしないで脇を通っていた足尾歴の長いハイカーですら好奇の目を向けるようになる。
石に腰かけてしばらく休む。ここでようやく沢靴から地下タビに履き替えた。オッチャンが沢入山方向から下って来た。あのオッチャン、出がけに導水管橋の方に行きかけて戻って来た方じゃないか。沢入山まで行って来たそうだ。
晴れてはいるが、展望は今少しだ。男体山も皇海山も隠れている。これから悪くなるのだろうか。
さて、これからどう下ろうか。下りのルートは井戸沢右岸尾根と一般道以外に選びようがないが、ここのところ一般道選びが続いているし、仕方ない。あまり好きではない井戸沢右岸尾根下りにするか。
(中倉山)

その前にちょっと中倉山でお昼にしようかと思ったが、さっきのオッチャンがどかっと山頂に腰を下ろしていたので、お先にと声をかけて素通り。内心舌打ち。すぐにご老体2人連れが上がって来た。山中で出会ったのはわずか3人。今日は中倉山も静かだったのだろうか。
(しばらく続く。男体山見えず)

(石塔)

(井戸沢右岸尾根下り)

(黄色の小さな花が一面に)

井戸沢右岸尾根は最近、利用するハイカーが増えたせいか、やはり濃い踏み跡が目立つようになっている。ただ、ヤブの周辺ではあちこちを歩くのか、一時的に踏み跡は消えては復活する。石塔の上のケルン、RRさんがどうも石を継ぎ足したようだな。
(林道に出る)

(林道歩き)

(駐車場)

林道に出る。井戸沢で顔を洗い、ようやくここで遅い昼食をとった。
キューゾーとその他一羽の鳴き声を聞いて駐車場着。駐車場は満杯だ。バスも2台。バスは小学校の名前の札が置かれていたから、ここの公園だろう。他に観光客も目立つ。名古屋ナンバーの車がないか探したが、その頃、名古屋ナンバーは銀山平だったようだ。それにしても、この中に瀑泉さんのお車があるとは知りもしなかった。かつてのミラ号だったらすぐにもわかったろうが。