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Channel: たそがれオヤジのクタクタ山ある記
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雄国沼でニッコウキスゲ。今年は例年の1/3の咲きとのこと。それでも癒された気分。

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◎2023年7月5日(水)

ラビスパ裏磐梯(8:13)……東口登山道(8:26)……雄国山(10:06~10:16)……雄国沼休憩舎(10:41)……雄国沼(11:00~11:26)……休憩舎(11:42~11:54)……雄子沢登山口分岐(11:58)……雄子沢登山口(12:42)──シャトルバス(12:50発)──ラビスパ裏磐梯着(13:03)

 八方台から猫魔を経由して雄国沼と雄国山を回って戻る。なんてことを考えていたが、ここのところまともな歩きをしていない。無理だろう。だったらせめてラビパス裏磐梯から雄国沼まで行って猫魔まで足を延ばす。どうしても猫魔ヶ岳にこだわってしまう。こだわる理由に特別なものはない。地図を眺めていたら、雄国沼の近くに猫魔ヶ岳が記されていたからだけのことで、ここのスキー場には若い頃に行ったことがあった。これも今の体力と暑いこの時期を考えればしんどいだろう。
 現実的な選択として、ラビバス裏磐梯からの雄国沼ピストンとした。周回にしたいところだが、雄子沢登山口に出てしまうと、その先はシャトルバスでラビパスに戻ることになる。そのバス代は1300円(往復だと2000円)。この価格設定はいかがなものだろう。後で調べると、距離は7.3kmもあるし、相応の事情があってのことだろうが、今やラーメン一杯1000円時代になったとしても、ラーメン代を超える乗り物代が高いと思うのは普通の感覚だ。だからピストンにせざるを得なかった。せめて、途中で合流はするが、ラビスパからは東口登山道と西口登山道があり、往路、復路で使い分ければ少しは変化もあるだろうといった発想だ。シャトルバスだけは使いたくない。その時は、金銭感覚もさることながら、それをやったら安易だといった思いも少しはあった。ケチくさい横道話だ。群馬県の最低賃金は全国平均未満で、1000円ラーメンは一時間働きでは食えない高級品になってしまった。

(東口登山口)


(最初は感じの良い道だなと思ったが、すぐに飽きてくる)


 ラビスタ裏磐梯の前は広く、登山口がどこにあるのかわからない。案内板もない。テントを張って、シャトルバスのチケットを売っているオバさんに聞いた。東西の登山口を教えてもらった。どうせ、両方歩くのだろうしと、東の方に行く。舗装道が続き、登山口に出るまでが長かった。気温は20℃にもなっていず、涼しい風もあったので我慢はできたが、これが無風でカンカン照りだったら、10分以上の歩きは嫌になるだろう。登山口近くには専用らしき駐車場とトイレがあり、車は4、5台置かれていた。人の気配はない。
 登山口からは未舗装になった。緩い登り道が続く。歩道は整備とまではいかないが、しっかりしている。さぞ快適に歩けるだろうと期待したが、数分歩いただけで、こんなものかとがっかりした。無風の中、ずっと樹林帯の歩きになり、展望は雄国山の手前に至るまで、樹々の葉に覆われた頭上の狭い空以外にまったくなかった。空気がひんやりしているだけでも助かるが、風がないからには汗が出てくる。ほどなく、帽子の間から汗が顔に落ちてきた。メガネだけは汗で濡らすまいと、ひっきりなしに手拭いで落ちる汗をぬぐった。ここの樹林を抜ければ、尾根歩きもあり、風にあたりながらの快適な歩きになるに違いない。そこまでの辛抱だと思うことにした。

(結構な泥濘が続いた)


 泥濘が続くようになる。距離としては200m弱といったところか。この泥濘は事前に調べて知っていて、むしろ、このところ晴れていたから泥濘も消えたかと思っていたが、消えてはいなかった。この泥濘情報から、地下タビではなく、普段は履かない、廃棄寸前の古い登山靴を選んだのが災いし、喜多方ラーメンを食べることもなく帰ることにもなってしまった。
 事前情報といえば、ここの雄国山までの歩道にはギンリョウソウやらの珍しい草花があり、猫が途中まで道案内をしてくれる、クマのうなり声が聞こえた、クマに出くわしたといった情報を知ってはいたが、自分の身にはまったく縁がなかった。特にギンリョウソウは、ずっと注意をしながら歩いたが、本来、草花に縁のない自分の目に入り込むことはなかった。

(どこまでも同じような風景が続く。何も見えないのでは仕方もない)


(ここで東西コースが合流する)


 気まぐれに朽ちりつつありそうな木の階段が出てきて、西口登山道と合流。ラビスタ出発から40分近くかかっている。<雄国パノラマ歩道>と記された古い看板があった。雄国山まではまだ3.5kmある。しかし、どこがパノラマなのだろう。すでに汗ダクだ。西口コースも、自分の歩いて来た東口コースも同じようなものかもしれない。下山でそちらを使っても、変化のある歩きを楽しめたという結果にはなりそうもない。ただ、これはあくまでも「後に思うに」ということであって、この時点では、この先のパノラマを期待したりもしている。

(何だか、合流しても同じ雰囲気)


 合流すると、道はしっかりし、この先に泥濘はない。相変わらず傾斜は緩い。前後にだれか歩いている気配はない。うなり声もなく、ただ静かで、樹林帯の中をひたすらに歩いて行く。聞こえるのは自分のスズの音だけだ。見上げては、あそこに出ればパノラマかと思っても、見える景観に変化はなかった。しかしながら、地図上の尾根型が明瞭にならないのはどうしてだろう。歩道は微妙に巻いているのだろうか。

(ササが出てきたのでパノラマを期待してしまった)


(本当はここで休みたかった。狭いスペースに他のハイカーがいたのでは休めようもない。無意味な沢だけの写真を記念に撮った)


 樹木が細くなり、次第に視界が明るくなってきた。空も広がった。そしてササ斜面が出てくる。普通なら、ここでようやく…となる。地元でもない自分が文句を言う立場にはないが、ここまで歩いていて気が重かった。ようやく解放されるか。登山口から一時間近くすっきりしない歩きを続けている。
 ササ野の先で話し声が聞こえた。道を横切る沢のところで二人連れが腰掛けて休んでいた。沢を見た瞬間にオレも休みたくなった。沢水で顔を洗い、手拭いも洗いたかった。できれば、身体も水で拭きたい。それは無理。自分が座り込むスペースはない。コンニチワと挨拶だけして素通りしたが、だれもいなかったらやりたいことをやって涼んでいた。

(ササが高くなったが、その分、空しか見えない)


(ようやく雄国沼が見えた)


 両サイドのササヤブが高くなった。トンボが随分と飛んでいる。もう40年近い前になろうか。会津駒ヶ岳に登った際、やたらと赤トンボが飛んでいたのを瞬間的に思い出した。山の記憶は薄いが、トンボのことだけは濃厚だ。他の山にもトンボはたくさんいるが、なぜか会津駒のことしか記憶にはない。ようやく、左手に雄国沼の一角が見えた。そして右手には飯豊連峰。残雪はたっぷりだ。もしかして、これがパノラマか? だとすれば、周囲のヤブが高過ぎる。垣間見えるレベルだ。

(雄国山に到着。しんどくはなかったが、気分的にえらく長く感じた)


(変わったシンボルマーク)


(飯豊連峰。トンボに邪魔されたが)


 立入禁止の展望台が正面に見えた。ヤレヤレ、ようやく雄国山到着のようだ。ラビパスから2時間弱。ほぼ昭文社マップのコースタイム2時間に同じで、最近の歩きとしては上出来だろう。まして傾斜も緩かった。
 山頂には先客の二人連れだけ。先ずはセルフ撮り。自分なら、気づけば、撮りましょうかと声をかける。山頂からの展望はよかった。まさにパノラマだ。今までの歩きがウソのようで、帰りにここを下ることを思うと気が重くなる。石に腰掛けて水を飲み、菓子パンを食べる。その間に先ほど追い越した二人連れが登って来て、先客も含めてさっさと沼に下って行った。
 一人きりになった。これ幸いに、立入禁止の展望台に登ってみようか。展望台からの景観がさらに広く見えるに決まっている。カメラだけ持って展望台の下に行ったところで単独氏が登って来た。残念でしたで果たせず。雄国沼に向かって下る。今回の目的はニッコウキスゲだ。

(雄国沼に下る)


(山頂を振り返る。あの展望台に登りたかった)


(アザミがあちこちに咲いていた)


(磐梯山が見える。左奥が櫛ヶ峰で、右が猫魔ヶ岳だろうか。またトンボが入り込んでしまった)


(雄国沼の全容)


 雄国山からの下りが本日のハイライト。自分には草花よりもやはり景色だ。雄国沼の左手に猫魔ヶ岳、磐梯山、櫛ヶ峰と思しき連なりが見える。雄国沼の南の山々はその外輪山かのようにも見える。程よい風も流れている。ニッコウキスゲのことがなかったら、ここでじっとしていたいものだ。
 そのニッコウキスゲだが、今年は例年の1/3くらいの不作だと記された記事を読んでいた。5月下旬に霜が降り、ツボミのつきが悪く、株数も少ない状態とのことだ。だとすれば、下りながら雄国沼を眺めれば、いつもなら、黄色の絨毯があちこちに見えるのだろうか。今は緑以外の色は見えない。代わって、周囲にはアザミがあちこちに出ている。何で、こんなにアザミが咲いているのだろう。

(雨が降れば、泥濘になるということだろうか)


(なぜかバケツがあったりして)


(休憩舎に到着。休みたかったが素通りせざるを得なかった)


(休憩舎の前にあった。名物?)


 雄国山を下りきる。しばらく行くと、雄子沢登山口分岐を見て、猫魔ヶ岳分岐となって休憩舎に着いた。いつの間にやら暑くなっていた。休みたかった。下りで足のつま先が痛くなっていた。おそらく、間に合わせの古い登山靴が、もう今の足に合わなくなっているのだろう。休憩舎には団体さんがいた。こういう、ご老体主体の団体には、概して仕切り屋のジイさんがいるもので、見ずともに様子は分かる。アメでも配っているのか、「みんなにいったかい」と大声を出している。立ち寄って足を休ませる気持ちは失せた。

(アザミ街道だった)


(キスゲも出てくる。クモが中にいた)


 休憩舎からすぐに雄国沼に出られるわけではない。歩道が長い。道沿いにはアザミとともにニッコウキスゲも咲いている。花ではないが、気になったのが金沢峠の分岐。雄国沼だけなら、金沢峠から入るのが一番近い。だが、そこに至る林道は閉鎖されている。この金沢峠が気になっていたのは、その近くにある雄国滝。峠から林道を歩くことになる。この雄国滝は300年前に、雄国沼の水を灌漑用に里に引くべく人工的に造られた滝のようだが、写真を見る限りは迫力もあって、いずれは観たいと思っていた。残念ながら、今回はキスゲ目的がある以上、時間はとれない。来年でも、改めて八方台から来る気になったら、寄ってみたい。

(ようやく雄国沼エリア。木道の幅があって、写真を撮るにはどうしても入り込んでしまう)


(ポツラポツラと寂しい気配。女性がいなけりゃ、絵にもならない)


 木道になって雄国沼が見えてきた。沼地にキスゲがいくつか見えた。寂しいなと思ったが、木道の先を見ると、黄色が目立っているところが折り返しあたりに見える。ここは木道のコースになっている。痛くなっている足のことは忘れた。急がずにでいい。ゆっくりと見物しよう。花が多くなってくる。よく見ると、枯れてしまっているのもあるが、例年の1/3の咲きながらも、ニッコウキスゲと沼、そして、沼からの周辺の景色を楽しめるだけでも十分だ。ここのキスゲの密度は尾瀬の大江湿原以上らしい。例年ならの話。余計なことは記さない。ヘタな写真を並べる。コンデジだし、そんなものだろうで写っている。それでも、余計なものは入れまいと、木道に寝転んで撮ったのもあったが、斜めになっていたのでそれはやめた。























(木道を周回すると、ニッコウキスゲは終わって、こんな花があった。ヒオウギアヤメというらしい)


(団体さんにぶつからないでよかった)


(何とかアヤメをアップで)


(磐梯山方面。噴煙だろうか)


(モズクのように見える。これはカエルの卵。わかりづらいが、先の方でオタマが泳いでいる)


 キスゲエリアを一周すると、タイミングよく、休憩舎にいたらしきグループが賑やかに木道に入って来た。ポーズを構えては写真を撮っている。お気持ちは理解できる。ここからは自由で、集合時間は何時と言う声が聞こえた。
 さて、ここからどうやって帰ろう。予定通りにラビスパに下るのもいいが、雄国山に登り返すのは問題もないだろうが、その先の陰鬱ともいえる下りが気分的にどうも応えそうだ。まして、指先は痛いままだ。雄子沢登山口に出てシャトルバスか。

(休憩舎に戻った。団体さんはいず、ゆっくり休んで菓子パンを食べた。風通しは悪く、汗が引かなかった)


 とりあえずは休憩舎まで出て休憩とした。団体さんはいなかった。ベンチに座って菓子パンを食べる。向かいのベンチでは、雄国山で見かけた二人連れが食事中だった。もう腹は決まっていた。シャトルバス。せっかく良い気分になったのに、あそこを下りたくはない。まして足指が痛い。
 地図を出す。この先の分岐からバス乗車の時刻を確認する。今、11時50分。出発時にチケット小屋のオバちゃんからもらったパンフのガイドには、雄子沢登山口発12時50分というのがある。次は13時30分。登山口までどれほどの距離があるのか知れないが、コースタイムとしては60分。何とかなるかもと急いで出発。もはやためらいも何もなかった。

(せせらぎ探勝路の下り。雨上がりならさぞ歩きづらいだろう。いや、むしろ水路になるかもしれない。パノラマラインもそうだったが、ここもまた粘土質だ)


(2.3kmの標識)


 上りで歩いた<雄国パノラマ歩道>とあまり変わりはなかった。ちなみに、この歩道は<雄国沼せせらぎ探勝路>。歩道は広く歩きやすいが、あちこちで樹の根が張り出していて、痛い足にはそれが引っかかり、こけそうになったりで、急いている自分にはいらついてしまう。<雄尾沢口2.3km>の標識を見たのは12時7分。休憩舎出発から12分経過しているから、バス停までは3キロ以上はあったろう。いくら下り一方とはいっても、歩きづらい山道をあと40分で行けるだろうか。ぎりぎりだ。さりとて、次のバスまで40分もじっと休むのはつらい。
 次の標識は<1.8km>で12時13分。500m歩きに6分かけている。歩きながら何となく計算するとあと20分少しになる。楽勝だなと思い、ペースダウンした。下りだからか、さらに指先が痛くなってきていた。沼にはあんなに人がいたのに、休憩している二人連れとこれから登る一人と出会っただけ。記し忘れたが、沢を何回か横切った。その都度に靴の泥を落としはしたが、手拭いを洗って顔を拭くような余裕はなかった。

(あと800m。写真のイメージと同じで、右下に車道が見えそうだが、なかなか見えなかった)


(登山口に下りた)


(シャトルバス乗り場。バスの運行は9日まで)


 <0.8km>で12時31分。ペースダウンし過ぎか、ここは500m歩きに9分かかった。とはいえ、800mは学校の校庭2周分だ。800mというといつも思い出すことがある。高校時代のこと。体育祭で800m競争にクラス代表で無理に出させられたヤツが、笑って応援するオレたちの顔を見て怒りながらこう言った。「オメェたち、走ってみろよ! 恨むからな」と。体育祭の後、普段は快活で賑やかな彼はしばらく無口になってしまった。この800mは随分と長く感じた。車道沿いの登山口に出た。12時42分。もう計算はいいだろう。100mほど先にバス乗り場が見えた。このバス乗り場も、今は締め出しになってはいるが、来週からは無料駐車場として元に戻る。ニッコウキスゲはいかに北塩原村の財政を潤しているかがわかる。まして、周囲の林道は崩壊理由に通行止めだ。シャトルバスの運行は23日間。

(何かトラブルでも起きたのかと思った)


(ラビスパ裏磐梯に帰着。同じバスに乗っていた若い女性が2人、風呂に入るのだろうか、入館する姿を見かけた。ラーメンが安かったら食べようかなと思って入ろうとしたが、ガラスドア越しのフロントは風呂に入らない客は敬遠といった感じがあったのでやめた)


 バス停に到着。滅茶苦茶に足が痛い。料金を払おうとしたら後払いとのこと。バスは乗車して5分も経たずに出発した。7人くらいは乗っていたか。顔見知りというのもおかしなものだが、道中で出会った顔はなかった。バスの座席に座ってほっとしたし、たかが15分乗車ながらも、エアコンの快適さでゆったりできた。
 ラビスパに到着。パトカーが2台。そして警官。不穏な動きが目に入った。1300円を払いながら、テントのオバちゃんに聞いた。クマが出て、木に昇り降りしてその辺にいる。警察が出ている。こんなに人がいるから、大丈夫だよ。このオバちゃんの認識は甘い。何年も前の乗鞍岳のバスターミナルでのクマの襲撃事件。あれは、ハイカー、物見遊山客の多さに興奮してしまったクマが次々に人を襲った。クマは興奮すると見境がなくなるようだ。
 車に戻る。全身が汗みどろ。幸いに、平日ゆえ、駐車場は空いていて、ドアを遮蔽にして外で下着まで取り替えた。狭い車内では足が攣ることもある。目の前にはラビスタ裏磐梯。550円で温泉に入れるようだが、せっかくここまで来た。次に寄って行きたいところがあった。風呂に入ってゆっくり帰宅したいが、寄り道を優先する。
 せめて、喜多方ラーメンを食べる予定でいたが、不測のバス代出費でこれはあきらめる。足の痛みのせいでバスにしたといった形にしたが、果たして、痛みがなくとも、ピストン歩きをする自信と体力があったのやらは怪しいところだ。打ち消したはずの安易な歩きになってしまった。
 肝心のニッコウキスゲだが、雰囲気を味わえただけで十分。たとえ本当に1/3だとしたら、次回はコースを変えてまた来てみたい。今回のパノラマコースだけは遠慮したい。

(今回の軌跡)

この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)

【達沢不動滝】
 次に向かったのは猪苗代町にある達沢不動滝。雄国滝に代わる滝が近くにないかと探したらこの滝が出てきた。無論、帰りがけの駄賃だから、沢歩きするまでもない観光滝だ。
 滝見に来る人はいるのかと思ったが、駐車場には車が4台置かれていたので驚いた。不思議に思ったが、この近くに中ノ沢温泉があり、おそらくは、せっかくだし、ついでに観て行こうかといった観光客だろう。
 看板を見てへーっと思った。この滝の近くを<戊辰の道>という古道が通っている。戊辰戦争の際、いわゆる官軍が賊軍を鶴ヶ城に追い込み、白虎隊の悲劇を生んだ。その際に、官軍が歩いた山道がここの戊辰の道だそうだ。ここは鳥居が二重になっていて、戊辰の道は二つ目の鳥居から分かれるらしい(後で知ったこと)。その古道が今どうなっているのかは記されてはいない。帰ってから調べることにしよう。
 駐車場から滝までは200mほどのものだろうか。不動明王像の後ろに、横長の一枚岩に滝が流れている。落差は10mほどとのこと。入口に「パワースポット」とあったが、確かに神聖な雰囲気のある滝だ。豪快さはないが、静謐さを湛えている。好みの滝だ。この滝は正式には「男滝」であって、「女滝」はどこかと探すと、やや下流部に丸みを帯びた岩盤があり、水がひっそりと流れているのが見える。ともに間近に見たかったが、沢を渉らねばならず、車に戻って長靴に履き替えるまでもないし、ここからでも正面にしっかりと見えている。遠回りの帰路にはなったが、滝見に失敗はなかった。
 ここも、写真を並べるだけにする。



























 帰り道は長かった。居眠りが出なきゃいいがと気になった。パラパラと雨があたった。降っては止みの連続だった。
 唐突な話になる。ビートたけしの小説を最近読んだ。その中に主人公と恋人との会話シーンが出てくる。恋人(女性)は落語にも精通していて、「談志の『芝浜』は狂気だ」と言うところがある。これは、彼女の気持ちというよりもビートたけしの思いなのだろう。三木助の『芝浜』は何度も聞いた。卒のないテンポで話は進み、落ちは「また、夢になるかも知れねぇから飲むのはやめとく」で終わる。談志の落語は食わず嫌いであまり聞いたことがない。早速、中古のCDを買い求めた。家で聞くと、音源が悪いせいか、それとも、談志の口調が速いのか、ほとんど聞き取れなかった。車の中で音を高くして聞いたらどうだろうかとCDを持って来ていた。栃木に入ったあたりで聞いてみた。音をかなり高くして、何とか聞き取れた。やはり、ビートたけしではないが狂気じみたものを感じた。夫婦の喜怒哀楽を表した言葉のやりとりが尋常ではなかった。生死の壮絶とでも言おうか。のんびりと進行する三木助とはまったく違う『芝浜』だった。内容の進めは少し違うが、最後の落ちは同じ。聞き終えて、しばらくボーっとしてしまった。強烈だった。余計な話だったが、敢えて記したかった。

 家に着いた。今日はこちらもさほどに暑くはならなかったようだ。車から出た瞬間に、出迎えの蚊の攻撃を受けた。蚊の活動には適温だったみたいだ。汗をかいたから、蚊には絶好の獲物だったのだろう。しかし、往復520km運転の日帰りは応えた。その後に続く犬の散歩はつらかった。

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